モデル動物での試験でアルツハイマー病への予防効果を確認
東京大学大学院は3月12日、農学生命科学研究科の中山裕之教授らの研究グループ、キリン株式会社R&D本部基盤技術研究所および小岩井乳業株式会社が、カマンベールチーズに含まれる成分が、認知症の一種であるアルツハイマー病の症状を再現したマウスにおいて、その原因物質であるアミロイドβの沈着を抑える効果があることを見出したことを発表した。
画像はプレスリリースより
高齢者の増加に伴い、認知症は大きな社会問題となっているが、本質的な治療方法は未だ明らかになっていない。こうした背景から日常生活の中で認知症を予防できる方法の開発が注目を集めている。これまで、チーズ等の発酵乳製品を摂取することで認知機能の低下が予防されるという疫学的な報告があったものの、詳細な機序やその有効成分は不明であった。
オレイン酸アミドとデヒドロエルゴステロールが有効成分
今回、研究グループは、発酵乳製品の一種であるチーズについて、その摂取がアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ(Aβ)の脳内沈着に影響するか否かを検証し、その有効成分の一部を明らかにした。
まず、アルツハイマー病の症状を再現したマウス(5xFAD)に市販のカマンベールチーズから調製した飼料を摂取させると、この成分を含まない飼料を摂取させたマウス群に比べて、アミロイドβの脳内沈着が減少。脳内の炎症が緩和されることを明らかになったという。
次に、脳内で異物の排除を担うミクログリアが、アミロイドβを除去する機能(貪食活性)と抗炎症活性を促進するはたらきのある物質を、カマンベールチーズの製造時に用いられる白カビで発酵させた乳から探索。その結果、オレイン酸アミドとデヒドロエルゴステロールを同定したという。これらの成分は、白カビによる発酵工程で生成された可能性が示唆される。
今回の研究結果から、疫学的に報告のある発酵乳製品の認知症予防について、カマンベールチーズによるアルツハイマー病への予防効果が有効である可能性が高まった。研究グループは、特定された有効成分の検証など、今後のさらなる研究が期待されるとしている。
▼外部リンク
・東京大学大学院農学生命科学研究科 プレスリリース