モルフォリノ化合物で合成されたアンチセンス核酸
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)と日本新薬株式会社は3月23日、両社が開発を進めているデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療剤(開発番号:NS-065/NCNP-01)の早期探索的臨床試験について、予定した投与がすべて終了したと発表した。
DMDは、男児に発症するもっとも頻度の高い遺伝性筋疾患。筋肉の細胞の骨組みを作るジストロフィンタンパク質の遺伝子に変異が起こることで、正常なタンパク質が作れなくなり、筋力が低下してやがて死に至る重篤な疾患である。現在、その進行を遅らせるステロイド剤以外に有力な治療法は存在していなかった。
NS-065/NCNP-01は、強力な薬効と高い安全性が期待される、モルフォリノ化合物で合成されたアンチセンス核酸と呼ばれる核酸医薬品。同剤は、ジストロフィン遺伝子のエクソン53スキップに応答する遺伝子変異を有するDMD患者を対象に開発した薬剤であり、DMD治療における重要な選択肢として期待されている。
治療効果を予測するジストロフィンタンパク質の発現を確認
今回の試験は、同剤をヒトに対して初めて投与した臨床試験であり、NCNP病院において10例のDMD患者に対して行われた。低用量群、中用量群、高用量群の3群で実施され、主要評価項目である安全性の他、ジストロフィンタンパク質の発現などの有効性についても検討を行った。
初期の解析の結果、同剤の治療効果を予測するジストロフィンタンパク質の発現を確認。また、同治験を通じて重篤な有害事象の発生はなく、投与を中止した例もなかった。一般的な有害事象としては、腎機能への軽度の影響や貧血が見られたという。
NCNPは現在、安全性やジストロフィンタンパク質の発現等についての詳しい評価を行っている。これらの試験結果の概要は、5月に開催される第18回米国遺伝子細胞治療学会、第56回日本神経学会学術大会など関連学会で発表する予定。
日本新薬は、NCNPとの共同開発契約のもと臨床試験を引き継ぎ、2018年度の国内上市に向けて、次の治験の準備を進めていくとしている。
▼外部リンク
・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース