細胞と足場素材を組み合わせた三次元細胞構造体による成果
富士フイルム株式会社は3月19日、再生医療のための細胞培養・移植に必要な足場素材「リコンビナントペプチド(RCP)」のマイクロサイズのペタロイド状微細片(petaloid μ-piece)を開発し、これと細胞を組み合わせた三次元細胞構造体「CellSaic(セルザイク)」の研究成果を得たことを発表した。
画像はニュースリリースより
移植した細胞や組織を生体内で機能させるためには、「移植した細胞や組織を効果的に生体内に生着させる」ことと、「移植した組織や細胞において栄養・酸素の供給や老廃物排泄を可能にする」ことが重要とされる。一般的に、移植した細胞や組織を効果的に生体内に生着させるためには細胞の足場となる素材を使う方法が、また栄養・酸素の供給や老廃物の排泄を可能にするためにはその通り道となる血管を早く導入させる方法が有効であると考えられている。しかし、細胞塊が大きくなるほど、中心部まで栄養や酸素が供給されず、また老廃物の排泄も困難になるため、血管導入までに細胞が死滅するという問題があった。
移植細胞の生存率を高め、膵島移植では血糖値を下げる結果に
これに対して富士フイルムは、動物由来成分を含まない同社独自の足場素材「RCP」を高度なエンジニアリング技術により加工して、マイクロサイズのペタロイド状微細片を新たに開発。それと細胞を組み合わせたモザイク状の三次元細胞構造体「セルザイク」を活用して、研究を実施したという。
まず、ペタロイド状微細片とヒト間葉系幹細胞(hMSC)を組み合わせたセルザイクをマウスに移植したところ、細胞だけ移植した場合と比較して、生体内に移植した細胞の生存率を大幅に高めることを実証。さらに、1型糖尿病モデルマウスの実験では、血糖値を制御する膵島、hMSCとペタロイド状微細片を組み合わせたセルザイクを共移植することで、血糖値を正常レベルにまで下げることにも成功したという。
同社はこれらの研究成果について、細胞移植の効率を飛躍的に高め、組織や臓器の再生を可能にするもので、再生医療の発展に大きく貢献するものとしている。
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・富士フイルム株式会社 ニュースリリース