医療スタッフや患者に多大な負担をかける「治療薬モニタリング」
芝浦工業大学は3月19日、同大応用化学科の吉見靖男教授が、血液中の薬剤濃度を適切に測定するための新たなモニタリング方法の基本技術を確立したと発表した。
画像はニュースリリースより
臨床で用いられる薬剤には、それぞれ固有の用法・用量が定められているが、同じ量を投与しても代謝の速さが違うなど、患者によって薬剤の効果の発揮度合いや速さが異なる。そのため医療現場では、個人差を考慮しつつ適切に投与方法・投与量の管理するため血中の薬剤濃度を監視する「治療薬モニタリング」が求められているが、血液採取後、抗体を加えて免疫反応を見るなど従来の方法は、煩雑な操作が必要とされるために、医療スタッフや患者に多大な負担をかけるという課題があった。
誰でも簡単かつ速やかに薬剤の血中濃度が測定可能に
吉見教授は今回、測定対象となる薬剤の分子の形を記憶させ、さらに電子の受け渡しをする分子も埋め込んだ新しい分子インプリント高分子(MIP)を作成。そこに薬剤がパズルのピースのように入り込むことで、電流が通りやすい経路を確立し、ここで得られた電流から薬剤濃度を把握することを可能にしたという。
今後、これをセンサーとして実用化することができれば、一般的な分析法で必要となる煩雑な操作を必要とせず、温度計のようにセンサーを血液検体に差し込むだけで、薬剤濃度が測定できるとしている。また、センサーを針状にして体に刺したままにすれば、薬剤濃度を常にモニタリングできる可能性もあるという。
現在は、抗血液凝固薬のヘパリンで測定できることを確認。また、他の薬剤にも適用でき、生体リズムに関与するセロトニン、抗菌薬のバンコマイシンについても効果を確認しているという。研究グループは今後、測定可能な薬剤を広げていくとともに、企業と連携し、センサーの実用化に向けて改良を重ねていくとしている。
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・芝浦工業大学 ニュースリリース