多くの点が不明だった小脳の運動学習
東京医科歯科大学は3月19日、ヒトの小脳運動学習を短時間で測定し、新しい指数を用いて定量評価する装置を世界で初めて開発したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究成果は、同大大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野(神経内科)の水澤英洋特任教授、横田隆徳教授と石川欽也教授(現・長寿健康人生推進センター)の研究グループと、理化学研究所脳科学総合研究センターの永雄総一チームリーダーとの共同研究によるもの。国際科学雑誌「PLOS ONE」オンライン版に3月18日付けで掲載されている。
小脳が関わる運動学習については、これまで正確、定量的に測定できる簡便な装置は存在していなかった。そのため、運動学習がどのように維持され、老化で低下するのか、また小脳に障害がある患者ではどの程度運動学習が障害されているのかなど、多くの点が不明だった。
脳の老化や疾患の正確な理解などへの臨床応用に期待
研究グループは、タッチパネル画面上にランダムに表示される指標を指でタッチするという運動を、水平方向に視線をずらす「プリズム」の有り無しで繰り返し行うことで小脳運動学習を評価するシステムを開発。この手の到達運動によるプリズム適応を用いたシステムは、ヒトが運動を学習する過程をリアルタイムに短時間で測定でき、Adaptability index(AI)という指数を用いて運動学習機能を定量評価することを可能にしたという。
小脳機能は主に診察で主観的に評価されていたが、同研究による客観的に短時間で定量評価する検査を用いることで、脳の老化、病気のより正確な理解、治療効果の判定など、さまざまな面での臨床応用が期待できる。同研究グループは今後、脳の発達、認知症の診断、自閉症や統合失調症といった精神疾患への応用についても研究を行っていくという。
▼外部リンク
・東京医科歯科大学 プレスリリース