「小型汎用DNAメチル化診断装置」の共同研究開発も開始
国立がん研究センターは3月17日、腎細胞がんの予後診断法を開発し、これを実用化するため、積水メディカル株式会社と共同で、「小型汎用DNAメチル化診断装置」の開発に着手したことを発表した。2018年の上市と、腎細胞がん以外のがん診断への応用も視野に共同研究開発を進めていくという。
画像はプレスリリースより
DNAのメチル化は、DNAに遺伝情報を書き込む暗号であるT・C・G・Aの4文字(塩基)のうちのC(シトシン)塩基にメチル基が結合して、細胞の中でタンパク質が作られる量を調節する仕組みのこと。DNAのメチル化の異常は突然変異と並ぶ発がん要因であり、がんの診断・治療・予防への臨床応用が試みられており、現在注目を集めている研究分野だ。
今回開発した予後診断方法は、腎細胞がんの中でも進行が速く手術をしても転移・再発を起こしやすい腎細胞がんにおいてCpGアイランドメチル化形質が陽性であること、また17個の遺伝子をマーカーとして同定したことにより、そのメチル化を測定し判定を行うものだという。
胃がんなどでも確認されているCpGアイランドメチル化形質陽性
今回、国立がん研究センターと積水メディカルが共同研究開発を行う装置は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によりメチル化シトシンを含むDNA断片を分離するもの。積水メディカルが有する高分子化学技術により、搭載するHPLCカラムの分離能を最適化することで、小型で高性能な診断装置を実現するという。積水メディカルは既にHPLC法を用いたグリコヘモグロビン分析装置を上市しており、小型でありながら迅速・精密な分析が簡便に行えることから、クリニックや小規模病院にも導入されて糖尿病診断に使用されている。現在開発中のHPLC法による「小型汎用DNAメチル化診断装置」は、このグリコヘモグロビン分析装置と同等サイズで、10~15分の測定所要時間で行える精密分析装置としての完成が見込まれている。
さらに、CpGアイランドメチル化形質陽性のがんは、今回初めて同定した腎細胞がんの他にもこれまでの研究で胃がんや大腸がんなどでも確認されている。また、同センター研究所では、DNAメチル化異常を指標とした慢性肝障害による経過観察中の肝がん発生リスク診断基準、尿路上皮がんの再発リスク診断基準なども開発しており、さまざまながん種のDNAメチル化診断の開発も進んでいるという。 現在開発中の装置が普及すれば、DNAメチル化診断を基盤とする先制医療・個別化医療に貢献できると、研究グループでは期待を寄せている。
▼外部リンク
・国立がん研究センター プレスリリース