末梢神経の再生にiPS細胞を応用、神経再生技術の実現に向け
大阪市立大学は3月18日、iPS細胞を末梢神経の再生に初めて応用し、神経再生の長期有効性について明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科整形外科学の中村博亮教授、上村卓也病院講師らのグループによるもの。研究成果は、「Cells Tissues Organs」に近日オンライン掲載される予定だ。
画像はプレスリリースより
外傷などによって生じる大きな末梢神経欠損に対しては、これまで体の他の部位から正常神経を採取し、欠損部へ移植する自家神経移植しか治療選択肢がなかった。しかし、神経を採取した部分に新たなしびれや知覚障害が生じることが問題となっていた。また近年、人工神経が開発され、臨床応用が進みつつあるが、国内外で市販されている人工神経は硬い材質のため移植場所が限られる、人工神経の神経再生が乏しいといった問題点もあり、未だ神標準治療には至っていなかったという。
iPS細胞を付加した人工神経群で有意な神経再生が認められる
今回、研究グループは、人工神経による神経再生を促進させるため、iPS細胞由来の神経前駆細胞を付加した、非常に柔軟性にすぐれた人工神経を開発。そしてその人工神経をマウスの坐骨神経損傷部に移植し、神経再生の経過を観察した。
移植後の経過では、iPS細胞を付加した人工神経群は人工神経のみを移植した群に比較して、マウスの下肢運動機能および知覚機能回復が有意に促進したという。組織学的にも、移植後の長期経過において、iPS細胞を付加した人工神経群では有意な神経再生が認められた。また、これらの全ての組織においてiPS細胞移植による腫瘍形成は認められなかったという。このように、iPS細胞と人工神経の併用によって、長期的に安全かつ有効な神経再生が認められた。
今回の研究は、人工神経の適応拡大につながる画期的な研究結果であり、今後、iPS細胞の移植再生医療に応用できる技術であると期待される。
▼外部リンク
・大阪市立大学 プレスリリース