2011年に迅速がん部位可視化スプレー蛍光試薬を開発
科学技術振興機構(JST)は3月13日、外科手術時や内視鏡・腹腔鏡手術時に、がんが疑われる部分にスプレーすると、数分でがん部位のみを光らせてがん細胞を検出できる、新たな蛍光試薬の開発に成功したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究成果は、東京大学大学院医学系研究科・薬学系研究科の浦野泰照教授ら研究グループによるもの。浦野教授らは2011年に、特定のたんぱく質分解酵素活性が、がん細胞で高くなっていることを利用した、世界初の迅速がん部位可視化スプレー蛍光試薬の開発に成功し、現在では患者由来の外科手術サンプルを用いてその機能の検証を行っている。しかし、この試薬では見つけることができないがんも多く存在することから、より幅広いがん種を光らせることができる新たなスプレー蛍光試薬の開発が望まれていた。
微小がんの発見や取り残し防止を狙う
今回は、新たに、がん細胞中の糖鎖分解酵素活性が高いことを活用したがん検出スプレー蛍光試薬の開発に成功。この試薬は無色透明で蛍光を発しないが、がん細胞中に含まれるβ-ガラクトシダーゼという糖鎖分解酵素と反応すると構造が変化して、強い蛍光を発する物質へと変化するように設計されている。
さまざまな種類の卵巣がん細胞を腹腔内へと転移させたモデルマウスに、この試薬を投与した結果、上述のたんぱく質分解酵素活性を標的とする試薬では可視化できなかったものを含め、全てのがん細胞の可視化に成功したという。
今回開発に成功したスプレー蛍光試薬を術中に使用することで、微小がんの発見や取り残しを防ぐことが可能となり、腹腔鏡を活用したがん治療に画期的な役割を果たすことが期待される。今後は、同スプレー蛍光試薬の臨床新鮮検体を活用した機能の検証と、安全性試験を行う予定だ。なお、この研究成果は、英科学誌「Nature Communications」オンライン速報版に3月13日付で公開されている。
▼外部リンク
・科学技術振興機構 プレスリリース