およそ200万人に1人とされる希少難病「FOP」
京都大学は3月12日、患者由来の疾患iPS細胞より、患者の遺伝情報をもつ対照iPS細胞を作製し、それぞれから軟骨細胞を誘導することで、FOP(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva:進行性骨化性線維異形成症)の病態の再現やメカニズムの一端を明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
この研究成果は、戸口田淳也iPS細胞研究所(CiRA)教授(再生医科学研究所/医学研究科)、池谷真同准教授、松本佳久名古屋市立大学整形外科臨床研究医(元CiRA/再生医科学研究所)ら研究グループによるもの。この研究成果は米専門誌「Stem Cells」に、3月12日付で公開されている。
FOPは軟部組織の中に、徐々に骨ができる(異所性骨化)疾患で、およそ200万人に1人の割合で患者がいると言われる希少難病のひとつ。これまでの研究では、ACVR1と呼ばれる遺伝子に変異が生じて、その遺伝子が過剰に働くとFOPとなることがわかっていた。しかし、FOP患者から組織サンプルを採取すると骨化を促進し病状を悪化してしまうことや、マウスを使ったFOP病態モデルの限界から、FOP発症の詳細なメカニズムは、不明な点が多いとされていた。
疾患iPS細胞では、MMP1とPAI1という遺伝子の発現が亢進
研究グループは、FOP患者iPS由来の疾患細胞において、FOPの原因となる遺伝子変異を野生型に修復。これにより、修復した変異以外は元の患者と同じ遺伝情報をもつ対照iPS細胞を作製することに成功した。
次に、患者由来の疾患iPS細胞と対照iPS細胞を軟骨細胞へと分化させたところ、疾患iPS細胞では軟骨への分化能が亢進していることを確認。また、双方のiPS細胞から軟骨へと分化させる途中の段階(間葉系間質細胞)でさまざまな遺伝子の発現を調べたところ、MMP1とPAI1という2つの遺伝子が疾患iPS細胞で発現が亢進しており、FOPの病態に寄与していることが示唆されたという。
今回のような患者由来の対照iPS細胞の作製は、FOP以外の疾患においても、より的確な病気のメカニズムの検討、より効率的で有効な創薬につながると、研究グループは期待している。
▼外部リンク
・京都大学 研究成果