同会議側が論点に挙げたのは、省令で医療機関内への薬局開設を禁止することの妥当性。
厚労省の成田昌稔大臣官房審議官(医薬担当)は、医療機関内に薬局を設置すれば、「医療機関からの処方箋が誘導され、門前薬局を助長することになりかねない」と指摘。その上で、「医師と薬剤師による処方箋のダブルチェック、副作用や残薬のチェックなどを行ってもらう面分業、かかりつけ薬局が医薬分業の姿だと思っている。そのための施策を進めたい」と述べた。
日薬の森昌平副会長も、「医療機関と一体的な構造になることは、機能的に薬局が特定の医療機関のものになってしまう。一人の患者の薬物治療を全人的に管理するためには、マンツーマンの関係ではなく、幅広い医療機関からの処方箋を受ける面分業を進めることが国民のためになる」と主張した。
しかし、公道を挟んで門前薬局が乱立している現状を踏まえ、同会議の委員からは、患者の利便性の観点から「病院内に薬局を開設できない規制は不便」といった意見が多く出た。
森下竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科教授)は、「病院内に薬局があっても経営は分離できる。建前論ではなく、実態に即して患者のメリットを考えるべき」と主張。林いづみ氏(桜坂法律事務所弁護士)も、「経営の独立性が確立されていれば、門内薬局を認めてもいいのでは。厚労省には(省令を)見直してもらいたい」と述べた。
討論会では、院内処方よりも患者負担が大きくなる院外処方でのサービスがコストに見合っているかについても議論した。
健康保険組合連合会の白川修二副会長は、医薬分業を進めることに一定の理解を示しつつも、処方箋料と調剤基本料の支払いにより患者負担が増していることを指摘し、「コスト負担に見合うだけの機能を薬局が果たしているのか」と疑問視した。
厚労省の吉田学大臣官房審議官(医療介護連携担当)は、患者の服薬情報を一元管理し、気軽に相談ができる、かかりつけ薬局を増やすことが医薬分業の目的と説明したが、国民の理解も含め、こうした取り組みは「道半ば」とした。
規制改革担当の有村治子内閣府特命担当大臣は、「関係方面から方向性を決めるような発言をするなと言われている」と断った上で、医薬分業の是非が「議論のテーブルに載ったこと自体、画期的なこと。正々堂々と議論を戦わせてもらいたい」と述べた。
■岡議長、6月答申も視野に議論‐利便性とサービスに焦点
公開討論後、記者会見した規制改革会議の岡素之議長は、「患者の利便性、薬局・薬剤師のサービスという論点については多少整理できた」と述べ、今後も医薬分業をめぐり、同会議として健康・医療ワーキンググループ(WG)で議論を深めていく考えを示した。6月の答申に盛り込む方向も視野に、利便性とサービスの観点から丁寧に議論を進めたい考え。
この日の公開討論で、院内への薬局設置を認めるよう求める意見が大勢だったことについて、岡氏は「まだ結論があるわけではなく、何も決まっていない」と議論が白紙であることを強調。「もっと薬局、薬剤師を活用してもらう部分もあるし、単に医薬分業のコストが高い、低いと議論しても意味がない」として、今後さらに医薬分業に関するサービス、コストの観点で議論を深めていきたい考えを示した。
同会議として、2016年度診療報酬改定に向けた提言を行うかどうかについては、「まだ議論に着手したばかりで、そこまでたどり着くかどうかも分からない。あくまでも二つの切り口で議論を深めて、6月の答申までに意見がまとまれば盛り込んでいこうという段階」と述べるにとどめた。
その上で、同会議のアンケート調査で、一般市民の約8割が医薬分業のメリットを感じていないと回答があった一方、厚労省から薬局の目指すべき本来の姿が示されたことから、「薬局で受けられるサービスに幅があると感じた。国民に分かりやすい形で、薬局、薬剤師から得られるサービスについて丁寧な議論が必要」と述べた。