■連携大学院を発展的解消
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、これまでの連携大学院に代わる制度として、新たに「包括的連携協定」を創設する。広範な協力・連携体制を構築するため、連携大学院を発展的に解消し、連携対象を大学だけでなく、国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)や、質の高い臨床研究を進める病院や研究機関にまで拡大。連携する項目や内容も、双方で協議しながら選択・設定できるようにする。連携の基盤を双方向の人材交流にすることで、特徴ある効果的な連携を目指す。PMDAは今後、連携を希望するアカデミアと協議を進める。
連携大学院では、修学職員として受け入れた連携先の大学院生に、医薬品・医療機器の審査・安全対策の実務経験を通じて、エビデンスに基づいた有効性、安全性に関する基本的な判断能力を身につけてもらい、そこで得た知識・経験をもとに論文を作成し、博士号を取得するなどの取り組みを行っていた。
一方、PMDAの職員も学位取得を目的に社会人入学の形で大学院生となり、PMDA業務に関連した研究を行ったり、職員を客員教授として大学に派遣してレギュラトリーサイエンス(RS)の講義を実施するなどの取り組みを進めていた。ただ、連携を大学院の枠組みに限定している現行の制度では、連携先や協力の内容が限られ、双方にメリットのある協力関係が構築しにくいなどの課題もあった。
2009年の制度創設から5年以上が経過し、制度見直しの気運が高まったため、連携対象を広げ、専門機関と広範な分野で協力・連携を進める「包括的連携協定」を構築することにした。
連携先専門機関の強みを生かした連携内容を設定するほか、連携関係を構築する際には、連携の本質的意義や目的、解決すべき共通の課題などを整理し、双方の連携メリットの明確化を図る。
PMDAへの人材派遣を中心とした交流を通じて、PMDA職員が連携先専門機関で科学的な視点に立った経験の幅が広がったり、連携先の専門機関側が薬事の考え方を取り入れることで、RSの推進・普及や臨床研究の質的向上につながることを見込む。既に協定を締結している大学については、連携目的を含めた連携のあり方を個別に協議していく。
RS推進部の蛭田浩一部長は、「これまでは、必ずしもアカデミアの人材をPMDAが受け入れるシステムにはなっていなかった」とし、双方向による人材交流の意義を強調。PMDAでRSの考え方を身につけた医師などが医療現場に戻って中核的な業務に従事するようになれば、「PMDAの審査、安全対策業務などがこれまで以上にスムーズになることも期待できる」とした。また、PMDAの職員に足りないとされる“現場感覚”も補うことができ、「連携協定で得られるものは多い」と語った。