危険ドラッグの蔓延が社会問題化し、既に指定薬物は1400種類以上に上っているが、構造を少し変えた新たな物質が相次ぎ出現し、行政による取り締まり強化との「イタチごっこ」が続いてきた。ただ、危険ドラッグの詳しい分析や同定に関しては、危険ドラッグが出現するスピードに追い付いておらず、検出技術の確立の遅れが大きな課題となっていた。
こうした現状を打開するため、岐阜薬大は、既に協定を結んでいた連携大学院の一環として、危険ドラッグの成分を分析している岐阜県保健環境研究所と協議会を設立。危険ドラッグの検出技術の開発に乗り出すことにした。
薬物動態学研究室を中心に、薬化学研究室、薬品分析化学研究室、薬効解析学研究室と連携し、大学の高度な分析機器、薬物検出技術、合成技術等を生かした研究を進める。特に検出が難しい合成カンナビノイドをターゲットに代謝産物の同定、それをもとにした化合物の合成、活性評価、危険ドラッグ使用者から短時間で薬物を検出する技術の確立を目指す。
さらに、危険ドラッグ研究の第一人者である国立精神・神経研究センター精神保健研究所薬物依存研究部の舩田正彦室長とも連携を図りながら、その研究成果を広く社会に還元していきたい考え。
プロジェクトの中心となる岐阜薬大薬物動態学研究室の北市清幸教授は、「あまりに危険ドラッグが出てくるスピードが早いため、まず既存の危険ドラッグの情報をきちんと集め、全く分かっていない代謝産物の情報を精査しながら蓄積していきたい」と話す。
岐阜県保健環境研究所生活科学部の堀内正部長は、「指定薬物の構造を少し変えることにより、その物質の活性が半分になったり、逆に何倍に上がるものもある。そうした物質の成分を測定するには、従来の指定薬物の枠を超えた検出、分析を行わなければならないが、それだけの高度な分析は地方衛生研究所だけでは難しい。大学の知識、技術を活用して、生物活性の情報を把握しておくことが大切」と指摘する。
今後、まず合成カンナビノイド、カチノン類の製品サンプルを入手し、その代謝産物の同定、化合物を合成して活性を評価する取り組みを進めていく予定。長期的には、これら2種類の危険ドラッグの似た構造を利用し、構造活性相関の研究による新規危険ドラッグの効果予測にも取り組む。
北市氏は「このプロジェクトは、スピードに対応できるユニットがあることが強みだ。大学として、代謝産物の同定を含めスピード感を持って対応したい」と意欲を示した。