■高まる期待と危機感背景に
核酸医薬は、これまで新たな創薬ターゲットとして実用化が期待されながら、大きな成果が出ていなかった。1991年には、日本核酸医薬学会の前身「アンチセンスDNA/RNA研究会」が発足し、98年に世界初の核酸医薬として、エイズ患者のサイトメガロウイルス性網膜炎症治療薬「ホミビルセン」が登場。2004年に加齢黄斑変性治療薬「ペガプタニブ」、13年には全身投与できる核酸医薬として、家族性高コレステロール血症治療薬「ミポメルセン」が承認されているが、これら3品目にとどまる。
最近は国内でも核酸医薬の研究開発が活発化し、日本新薬の国産アンチセンス薬は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬として国立精神・神経医療研究センターと医師主導治験を開始し、臨床入りしたほか、第一三共の独自技術を用いたDMD治療薬がフェーズI準備中などとなっている。
一方、国内で開発品の実用化が近づき、未整備だったガイドライン作りの必要性が指摘されていた。こうした状況を踏まえ、実用化と指針作りの受け皿を目指し、研究会メンバーを中心に学会化の検討を開始。基礎研究の方向性を見直し、RSの視点も取り込み、企業も参加する形で、衣替えを図ることを決めた。
佐々木氏は「芽が出てきた核酸医薬の実用化を、指針作りも含め引っ張っていきたい。企業も多く参加しているので、一気に進めることができれば」と意気込みを語る。
既に学会会員は100人以上、そのうち企業からは個人・団体を合わせ約20社が参加している。学会化の検討段階から企業が参加してきたこともあり、「実用化を強く意識した今までと違う学会ができるのではないか」と期待感を示す。
背景には、核酸医薬の可能性が90年代から期待されながら、大きな成果が出てこなかったことへの研究者と企業の危機感もある。佐々木氏は「自社のことに限らず、1社でも先行例として成功してもらいたいと考える企業の人もいる。そういう風土はなかったのではないか」と企業側の変化を指摘する。
その上で「化学、基礎生物学、企業からRS、臨床まで、核酸医薬をキーワードに結集し、本当に役立つ方向に融合できるような雰囲気作りをしていきたい」と話している。
現在、実用化が視野にある核酸医薬は、約10~20年前の研究成果が開花しようとしているものが多く、佐々木氏は「学会として今後、次に有望なターゲットを発信できる場所にし、いろいろな可能性を広げる基礎研究が進められるような学会にもしていきたい」との考えを示す。
この20年で国内のムードも変わってきたと話す佐々木氏。難しい時期が続いてきた核酸医薬の実用化に向け、「今までと同じことをしていてはいけない。RSも取り込み、期待と危機感を持って継続的に活動できる仕組みを確立していきたい」と前を見据える。