副作用による停滞期から再度浮上の時を迎える遺伝子治療
2014年11月、医薬品医療機器法(改正薬事法)が施行され、新たに再生医療等製品の定義が行われた。これを受け、日本の遺伝子治療の研究・開発は新たな局面を迎えた。なかでも遺伝子治療は、既存の医薬品や治療法で十分な効果が得られなかった疾患に対し、新たな可能性をもたらすものとして期待が高まっている。
アンジェス MG株式会社は2月26日、プレスセミナー「遺伝子治療の最新動向-いよいよ実用化が目前に-」を開催。東京大学医学研究所の小澤敬也病院長、アンジェス MGの山田英代表取締役社長が講演した。
東京大学医科学研究所 小澤敬也病院長
小澤氏は「過去には遺伝子治療で、(副作用として)白血病が出てしまい、『病気を治すのに病気を作ってしまった』として、しばらく低迷していた。それから何年も経ち、欧米では遺伝子治療は復活してきているが、日本には、まだ世界の動きが十分に伝わっていない」と語り、遺伝子治療で遅れをとっている日本の現状を示唆。2002年の白血病発生によって、プロトコール数は全世界的に頭打ちとなっていたが、安全性の高いレンチウイルスベクター、AAVベクターなどのベクターを使用することなどにより、2008年ごろから成功例が増え始めているという。2012年には、ユニキュア社のグリベラ(Glybera(R))が遺伝子治療としては初めて、欧州委員会の許可を取得している。
また、がん領域における遺伝子治療も期待されている。遺伝子治療臨床研究の対象疾患別プロトコール数では、がん領域の研究がおよそ6割を占めている。「キメラ抗原受容体(CAR)を用いたがん遺伝子治療は、B細胞性腫瘍(ALL、CLL、悪性リンパ腫)で100例以上が行われていて、かなりいい成績が出てきている」(小澤氏)
アンジェス MG山田社長「“早期承認制度”は米国でもリスペクトされている」
アンジェス MGでは現在、同社が創薬したHGF遺伝子治療薬(一般名:ベペルミノゲンペルプラスミド)の開発を進めている。現在、国内では医師主導の臨床研究が、海外ではグローバル第3相試験が、重症虚血肢を対象として進行中。同社の山田社長は、「改正薬事法の“早期承認制度”(条件および期限付承認制度)を活用して、国内で承認される遺伝子治療薬第1号となることを目指している」と語り、2015年末から2016年前半の承認申請を予定しているという。
また、条件および期限付承認制度は、海外においても注目を集めているという。「今年1月に米国サンフランシスコで行われたBIOTECH SHOWCASE 2015では、サンガモ社のEdward Lanphier CEOが早期承認制度を紹介し、『この領域で早く承認されるためには日本に行くべき』と宣言していた。この制度は米国でもリスペクトされている。今回のようなセミナーを通して、日本での遺伝子治療の位置づけを明確にしていきたい」と山田社長は語り、日本における遺伝子治療の認知向上と発展に貢献していく考えを示した。
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・アンジェス MG株式会社