日本の子どもにはビフィズス菌が豊富に存在
九州大学は2月24日、アジア5か国の子どもを対象に、ヒトの健康に大きく関わると言われている腸内細菌叢を調査した結果、アジアの子どもには大きく2つの腸内細菌叢のタイプ(エンテロタイプ)があること、また日本の子どもの腸内細菌叢は特徴的で、他国に比べて豊富なビフィズス菌を有し、大腸菌などの悪玉菌が少ないことを見出したと発表した。
画像はプレスリリースより
これは、同大大学院農学研究院の中山二郎准教授、ヤクルト中央研究所の渡辺幸一博士らの研究グループが、シンガポール国立大学のYuan-Kun Lee准教授らが率いるAsian Microbiome Projectの研究として行ったもの。同研究成果は、「Scientific Reports」に2月23日付で掲載されている。
研究グループは、アジア5か国の研究者グループと共に国際研究プロジェクト「Asian Microbiome Project」 (AMP)を設立し、アジア人の腸内細菌叢についての大規模な調査を実施。今回の研究成果は、AMPによる調査結果の第一報となる。
調査の対象には、日常の生活で外国文化の影響が比較的少ないと考えられる、小学児童の腸内細菌叢を選定した。調査を行った国は中国、日本、台湾、タイ、インドネシアの5か国で、それぞれ都会と地方の2か所において実施。7歳から11歳の子どもを対象に、各地域25名以上、計303名に対し、糞便の細菌組成と食習慣のアンケート調査を行ったという。
腸内細菌叢が及ぼす宿主の影響についてはさらなる研究が必要
調査の結果、アジアの子どもは欧米に比べるといわゆる善玉菌と言われるビフィズス菌を多く保有していた。特に日本と中国・蘭州の子どものビフィズス菌量が多くなっていたという。
また、アジアの子どもには大きく2つの腸内細菌叢のタイプ(エンテロタイプ)があることが判明した。1つは、日本、中国、台湾の子どもに多い、ビフィズス菌とバクテロイデス属細菌を主体とするBBタイプ。もう1つは、インドネシアとタイ・コンケンに多い、プレボテラ属細菌を主体とするPタイプである。プレボテラ属細菌は、食物繊維の分解酵素が強いことを特徴としており、難消化性でんぷんや食物繊維の多い東南アジアの食がPタイプの要因となっていると考えられるという。
さらに、日本の子どもの腸内細菌叢は非常に特徴的で、他国に比べてビフィズス菌が多く、一方で、概して悪玉菌と言われる腸内細菌科の細菌が少ないことも確認。また、検出される細菌の種類は少なく、個人差も少ないことが分かったという。日本特有の食習慣や生活習慣がこのような特有の腸内細菌叢に関係するとしている。
AMPでは今後、食と腸内細菌叢と健康についてさらなる詳細かつ大規模な調査を展開し、何を食べるとどのような腸内細菌叢が形成され、それが宿主の健康にどのように影響するか1つずつ明らかにしていきたいと述べている。
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・九州大学 プレスリリース