家族性自律神経失調症の根本的な治療薬となる可能性
京都大学は2月17日、同大医学研究科の萩原正敏教授らの研究グループが、科学技術振興機構等から支援を受け、東京大学、東京医科歯科大学と共同研究を行い、ユダヤ人に多い遺伝病である家族性自律神経失調症の治療薬候補化合物を発見したと発表した。この研究成果は、米国科学アカデミー紀要「PNAS」の電子版に2月9日付で掲載されている。
画像はリリースより
DNAは、細胞内において主にタンパク質の設計図としての機能を果たす。タンパク質が作られる過程は大きく二つのステップから成るが、まず、1つ目のステップで設計図からそのコピー(mRNA)が作られ、2つ目のステップで、そのコピーを元にタンパク質が作られる。設計図の情報はDNA上でイントロンという介在配列によって分断されているため、一つ目のステップにおいて、このイントロンを除いて意味のある部分を繋ぎあわせる、スプライシングという過程が重要な役割を果たしているという。
他の遺伝子疾患の治療法開発へ応用も
家族性自律神経失調症は、IKBKAP遺伝子のイントロンにある1塩基変異により同遺伝子にスプライシング異常が生じ、正しい設計図コピーおよびタンパク質が作られなくなることで発症する。研究グループは、DNAに疾患を起こす変異を持っていても、正しくスプライシングを起こさせる活性を持つ低分子化合物を発見。この化合物を患者由来の細胞に投与すると、変異を持っていても正しい設計図コピーが作られ、正常なタンパク質が作られることがわかったという。
さらに研究グループは、IKBKAP遺伝子の機能にも着目。世界で初めて、患者細胞においてIKBKAP遺伝子産物がtRNA修飾に関与することを発見した。また、前述の化合物投与により、その機能が回復することを示したとしている。
今回の研究により発見された化合物は、家族性自律神経失調症の根本的な治療薬となることが期待される。また、この治療戦略は、他の遺伝子疾患にも応用が可能であることから、根本的治療法がない疾患の治療法開発に道を拓く成果であると研究グループは述べている。
▼外部リンク
・京都大学 研究成果