経済産業省は16日、「再生医療の産業化に向けた原料細胞の入手等に関する有識者研究会」の初会合を開き、再生医療製品の原材料として利用される細胞や組織を安定供給するための仕組みづくりに向けた議論をスタートさせた。
研究会では、再生医療関連の研究成果を円滑に実用化・産業化につなげるため、再生医療製品等の原材料として利用されるヒト同種(他家)細胞をはじめとしたヒト細胞・組織を提供する際の倫理的、法的、社会的課題を洗い出し、解決方法を検討する。
議論の対象となるヒト細胞・組織は、手術や治療などで捨てられている歯(歯髄)や関節(軟骨、滑膜)、皮膚、脂肪、羊膜、臍帯血など。
厚生労働省が1998年にまとめた「手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発のあり方について」において医薬品の研究開発での利用が提言された、「手術等で摘出されたヒト組織」を想定している。
国内で実用化されている再生医療製品は、いずれも患者自身の細胞を用いるが、
他家細胞製品には、患者本人からは採取しにくい細胞等を利用することができるといったメリットがある。
また、免疫拒絶への対応や、大量培養・保存技術の確立などが必要になるが、他人の細胞を使って細胞シートなどをあらかじめ製造しておけば、火傷などの緊急時にもすぐに治療を開始することができるほか、1人の細胞から複数の製品が製造できれば、コスト面で有利になるという利点もある。
そのため海外では、多くの企業が他家細胞製品の製造・開発に乗り出しているが、日本では細胞のほとんどを米国などからの輸入に頼っている。
国内では、他家細胞を再生医療製品の原料として利用した経験が乏しく、実務上の取り扱いに不安があることなどから、入手が困難になっており、他家細胞を安定的に供給する透明性の高い仕組みを構築することで、こうした課題の解決につなげたい考えだ。
研究会は、3月までに3回の会合を開き、議論の整理、取りまとめを行う予定。