■製薬企業と共同研究目指す
厚労省の医療情報データベース基盤整備事業は、医薬品の安全対策を推進するため、2011年度から5カ年計画でスタートした。大学病院、グループ病院の10拠点病院にデータベースを、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に情報分析システムを構築し、研究者や製薬企業が医薬品の副作用発生頻度を調べたり、分析する目的で利用し、迅速で的確な安全対策に生かすのが狙い。14~15年度に試行事業を実施する計画となっている。
現在のところ、拠点病院で運用に向けたデータの品質管理を検証するバリデーション作業が進められ、これまで10拠点病院のうち、東京大学病院、浜松医科大学病院、九州大学病院が検証を終えた状況にあるが、当初予定に比べて進捗が遅れているのが現状である。
ただ、国の事業で構築した医療情報データベースは世界に類を見ないシステムとされ、現時点でデータの品質検証を終えた拠点病院が自発的に利用することは認められているため、製薬企業との契約により、データベースを用いた共同研究として、試行運用を先行的にスタートさせる。
14年度中には、さらに東北大学病院、香川大学病院、佐賀大学病院、徳州会病院グループがバリデーションを終える予定になっている。これら拠点病院が主導する形で製薬企業と共同研究を計画し、副作用の頻度などを調べるためにデータベースの処方・注射歴、検体検査結果を用い、試行運用を順次開始する。 今回の試行運用は、拠点病院が自主的に製薬企業との産学共同研究として進めるものであり、製薬企業側は自社の医薬品で調べたい副作用の発生頻度などについて、検証を終えた拠点病院と共同研究を実施する形でデータベースを利用できることになる。
例えば、製薬企業は発売直後の新薬の副作用をいち早く察知するため、大規模な母集団から迅速に副作用の発生について把握可能なデータベースを有効活用できる。薬剤の肝機能障害の頻度を調べたい場合はデータベースから100処方中10例、25処方中3例などと情報を得ることができる。医療機関による自主共同研究のため、他社製品との比較も可能で、拠点病院のデータベースを利用することにより、医薬品のリスクベネフィット評価が進みそうだ。
今回の自主共同研究によるデータベース試行運用は、大学病院が中心となることから、急性期に用いる抗癌剤をはじめとするハイリスク薬をターゲットに副作用の頻度などを検討していく予定である。