地域包括ケアシステムの構築と住民参加をテーマにしたシンポジウムが3日、都内で開かれた。基調講演と事例報告、パネル討論が行われた中で、地域包括ケアは介護・医療者が中心の取り組みではなく、地域で生活する住民を主体に据えた地域づくりであることが強調された。
国際医療福祉大学の高橋鉱二教授は、地域包括ケアシステムをめぐり、「住民サービスと介護・医療サービスを分けてはいけない。生活する住民を前提に考えることが必要」とケアの主体性を訴えた。その上で、「地域包括ケアのベースは住まい」との考えを示し、「既存の価値を維持していると成り立たない。ケアとエンドオブライフ(終末期)をセットにして、われわれの生活の集大成として考えなければいけない」と述べた。要介護認定率が低下した和光市の事例を挙げ、「住民が元気に社会参加する地域をつくると、介護度が下がる」として、地域づくりの重要性を強調した。
南砺市民病院(富山県)の南眞司前院長は、南砺市における地域包括ケアの取り組みを紹介。家族の絆を構築するため、介護を家族の義務から解放するという基本認識の一致が必要として、地域を基盤とするケア構築の重要性を訴えた。
地域包括ケアは、地域住民を巻き込んだ地域づくりとの考えを示し、首長による規範統合や指導者の存在、専門職や地域住民の参加が必要とした。
東京都武蔵野市の笹井肇健康福祉部長は、地域包括ケアを、「まちぐるみの支え合いの仕組みづくり」と位置づけ、重度要介護状態となっても住み慣れた地域で暮らしを続けられるよう尊厳を維持し、高齢者のQOLと居宅生活の限界点を高める目標を紹介した。
パネル討論では、高橋氏が「家族を前提とした在宅ケアから単身の在宅ケアに変わってきている」と高齢単身者の増加を問題提起した。笹井氏は「同居でも2世帯住宅で玄関が別など、独居には外形的な一人暮らしと自主的な一人暮らしがある」と指摘。同居している高齢者でも、日中は独居であることが多く、実質的に独居者と考えて施策を体系的に進めていかなければならない」とした。