生薬の品質は、その元となる植物の栽培方法や生育環境、収穫、採取、加工、輸送、保管などに影響を受けるほか、化学物質や微生物汚染といったリスク管理も必要になる。品質を確保するための生産技術を規定しているのが、GACPとなっている。海外では、2003年に世界保健機関(WHO)が野生の薬用植物を含めたGACPガイドラインを発刊し、中国でも、薬用植物栽培と野生品採取に関する生産管理が進められている。
日本の生薬栽培については、もともとWHOのGACPガイドラインの「ANNEX3」で収載されていたが、日漢協生薬委員会がこれを参考に、より分かりやすい形で日漢協版GACPの取りまとめを行った。内容は、▽薬用植物の栽培▽野生薬用植物の採取▽加工(収穫後または採取後の処理)▽加工終了後の工程▽従事者の健康と安全▽従事者に必要な知識▽自己点検――などの項目について、日本語、英語、中国語で記載している。
漢方薬メーカーの業務手順を定めたものではなく、産地側に遵守してもらうべき内容となっているため、自主基準(ガイドライン)ではなく手引きとした。薬用植物の栽培化に向けたマッチングが加速し、既に圃場での試作もスタートしているものの、栽培段階での品質管理をめぐっては、まだまだ認識に隔たりが見られている。日漢協では、産地側が栽培に着手するに当たって、栽培計画や手順を決定する際の参考情報として、GACPを活用してもらいたい考えを示している。
日本が正式加盟したPIC/S―GMPに漢方製剤も対応が求められる中、生薬栽培から製造・流通の全工程を管理する“トレーサビリティ”の仕組みづくりが欠かせない。12年2月には、厚生労働省から生薬・漢方生薬製剤の製造・品質管理に関する自主基準が取りまとめられ、生薬管理責任者業務の要件として、生薬の起源となる産地情報の項目が加えられた。具体的には、薬用植物の収穫時期や採取手順、使用された可能性のある農薬、乾燥方法などの生産記録を管理することが求められている。
今回の手引きには、産地側が生産記録を行う際の参考様式を付加している。日漢協生薬委員会副委員長の吉村宏昭氏は、本紙の取材に対し、「生産者の方々には、栽培・加工などの品質管理はもちろん、生薬の生産工程をしっかり記録し、保管することをお願いしたい」と理解を求め、「“医薬品をつくる”意識が高まり、生薬栽培が活性化していくことに期待したい」と語った。
今後、日漢協ホームページでもGACPを公開する予定。実需側と産地側のマッチングを通じて現場でGACPがどう運用されているかをモニタリングし、必要に応じて改訂していくとしている。