日本の倫理審査委員会をめぐっては、本来チェック機能を果たすべき審査が形骸化し、被験者の安全や人権保護につながっていないこと、臨床研究不正の歯止めにならなかったことが厳しく指摘されてきた。また、昨年3月現在でIRBの設置が1330件に上り、質にバラツキのあるIRBが乱立していることにも問題意識が示されてきた。
こうした状況を受け、厚労省は、日本におけるIRBの質を向上させる取り組みに乗り出し、昨年度の予算事業として認定制度の検討を進めてきたが、このほど制度の骨格が固まったことから、2日から認定の申請受け付けを開始し、認定制度をスタートさせることにした。
認定要件は、4月に施行予定の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が求めている基準を満たすこと。申請書類には、そのIRBでの審査件数や審査時間、委員の審査経験、教育内容等、詳細な記載を求めており、審査の効率性や事務局体制も判断材料となる。
今後、21日まで申請を受け付け、3月上旬に臨床研究に精通する医師、臨床研究コーディネーター(CRC)、生物統計家等、専門家で構成する有識者委員会を開き、審査を行う予定。書面審査に合格したIRBに対し、さらに実地調査を行った上で、来月中に認定を開始したい考え。
国が質の高いIRBであることを証明することが目的のため、認定に関する諸費用は無料。有効期間は3年で、更新審査の実施を予定している。1機関で複数のIRBが設置されている場合は、運用規定が共通であれば一つのIRBとして認定する。
厚労省は、国が質の高いIRBとして認定することにより、乱立する現状に歯止めをかけ、質の高いIRBとそうでないIRBの差別化を進めたい考え。「きちんと審査している委員会を明確にしたい」(厚労省医政局研究開発振興課)としている。
認定IRBには、他の医療機関からの審査依頼が増える等、今後は倫理性、科学性を適切に判断できる審査の集約化が予想され、国の認定を受けたIRBが日本の中心的な存在として位置づけられることが期待されている。