■16年度から研修新設
厚生労働省は27日、省庁横断でまとめた認知症対策の国家戦略「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を公表した。認知症の早期発見に向け、新たに薬剤師の対応力を向上させる研修の実施を明記。地域の薬局薬剤師が服薬指導により、認知症の疑いがある人に早く気づき、適切な対応を進める方向性を打ち出した。来年度に研修のあり方を検討、2016年度から関係団体の協力を得て研修を開始する予定だ。
新オレンジプランでは、団塊世代が75歳以上となる25年に、認知症の人が約700万人に達すると推計。高齢者の5人に1人に増加すると見込まれる認知症の人が住み慣れた地域で暮らし続けられる社会の実現を目指し、地域包括ケアシステムの構築を進める中で認知症への取り組みモデルを示していく。
新オレンジプランの柱の一つ、適切な医療・介護等の提供に関しては、認知症の早期発見、早期対応のための医療・介護の体制整備に向け、認知症の人や家族が小さな異常を感じた時、速やかに診療所のかかりつけ医や薬局等に相談できるようにすると共に、薬剤師の服薬指導、町内会や商店、NPO等によるネットワークの中で、認知症の疑いがある人に早期に気づき、適切に対応できるような体制を作っていくとした。
まず、身近なかかりつけ医が認知症への対応力を高める必要性を強調しつつ、日常的に診療所や地域包括支援センター等と連携する薬局にも早期発見の役割が期待されると明記した。また、薬局の薬剤師については服薬指導などを通じて高齢者と接する中で、認知症の疑いがある高齢者を早期発見することにとどまらず、かかりつけ医と連携し、認知症の人の服薬指導等を適切に行うことの必要性を強調し、これら取り組みを推進していく方向性を示した。
そのため、薬剤師の認知症対応力を向上させることを目的とした研修を実施する方針を打ち出した。スケジュールとしては、来年度に研修のあり方を検討し、16年度から関係団体の協力を得て、研修を実施する方針を明記した。
厚労省の15年度予算事業「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点」を認知症施策でも活用することを想定。地域包括ケアシステムの中で、拠点としての薬局が高齢者の健康づくりや認知症の普及啓発を行い、服薬指導において認知症の疑いのある高齢者に気づき、かかりつけ医と連携し、早期診断と早期対応につなぐことなどを求めている。
また、認知症にかかわる徘徊等の行動・心理症状(BPSD)や身体合併症等への対応として、非薬物的介入を第一選択とする原則を示した上で、投薬に当たっては、生活能力が低下しやすいことや副作用が生じやすいことなど、高齢者の特性を考慮して対応される必要があるとした。内服薬の重複や頻回の副作用が見られるとの指摘もあり、地域医療における投薬を調整する取り組みを進める方針を打ち出した。
一方、認知症の予防、診断、治療法の研究開発については、政府の「医療分野研究開発推進計画」による省庁連携プロジェクトにより進め、15年度までに分子イメージングによる超早期認知症診断方法の確立、20年頃までに日本発の認知症の根本治療薬候補の治験開始を目指すとした。