
土屋氏は、薬剤師法において調剤は基本的に薬剤師の独占業務と規定され、看護師と准看護師の関係のような補助員に関する規定はないと言及。無資格者が処方箋を使用して薬を取り揃える行為は、違法性を問われる可能性があると指摘。
薬剤師法に抵触しない情報システム体制として土屋氏が例示した奈良県立医大病院では、処方箋とは別に取り揃え用の情報を記載した指示書を印刷している。そこには棚番と数量しか記載されておらず、薬剤師資格を持たないスタッフはその情報を見て薬を取り揃える。その後、薬剤師は処方箋を手に監査を行って調剤した薬を払い出している。
この体制は5~6年前に構築した。当時は薬剤師が取り揃えを行っており、必要な情報に絞り込んで取り間違いを防止する目的で開始した。その後、取り揃え業務にスタッフを活用するようになったという。
土屋氏は、取り揃えの指示書を別に発行していれば、各種調剤機器が実行している業務を代わりに人が行っているだけと解釈できるとし、「そうしていれば少なくとも薬剤師法違反にはならない」と私見を提示。調剤に関して違法性を問われない情報システム装備構築の必要性を強調した。
一方、昨年6月に施行され、従来の情報提供義務に加えて新たに指導義務を薬剤師が負うことになった薬剤師法第25条の2について土屋氏は「1年目の薬剤師でもこの義務を負う。必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。身分法と診療報酬を一緒にしてしまう人がいるが、両者は異なる。指導義務が身分法についたのは極めて重い」と語った。
これまでは医師のみに指導義務が課せられ、薬剤投与の目的、具体的効果、副作用がもたらす危険性に関する指導義務も医師が負っていた。しかし、薬剤師も指導義務を負うことになり、「今後は、薬のことについては薬剤師が訴えられる」と言及。「専門職として医師同様の責任を薬剤師も持つことが求められている」と話した。
このほか土屋氏は、指導義務を果たしたことを証明するために「いつ誰が誰にどのような内容の指導をしたのかという記録が必要になる」と強調。▽外来患者への指導時に、指導実施の有無、指導内容、対象薬などの記録をチェックボックス方式で残す▽処方箋の薬剤師押印欄に「情報提供・指導」欄を新設し、押印して記録を残す――などの対策を例示した。