がんの遠隔転移を担う新規遺伝子ネットワークを発見
京都大学は1月23日、UCHL1-HIF-1という遺伝子経路ががんの転移を担い、同経路の遮断によって転移を劇的に抑制できることを発見したと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大医学部附属病院の原田浩特定准教授、平岡真寛教授、医学研究科の後藤容子大学院生を中心とする研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Nature Communications」で公開予定としている。
これまでの基礎研究および臨床研究では、低酸素誘導性因子1(hypoxia-inducible factor1:HIF-1)という遺伝子が、がんの遠隔転移の成立において重要な役割を果たすことが指摘されていた。しかし、HIF-1を活性化してがんの転移を導く遺伝子ネットワークは解明されておらず、有効な治療法を確立する上で大きな障害となっていた。
がん患者の予後を予測するマーカーとしての活用に期待
研究チームは、HIF-1活性化因子を網羅的にスクリーニングする遺伝学的手法を確立し、Ubiquitin C-terminal hydrolase-L1(UCHL1)を同定。UCHL1がHIF-1を活性化することによって、がん細胞の転移能が亢進すること、逆にUCHL1の機能を阻害した場合に、遠隔転移発生率が有意に低下することを見い出したという。
これにより、がんの転移を抑制するための標的分子として、また、がん患者の予後を予測するマーカーとして、UCHL1を活用できることを世界で初めて示したとしている。研究チームはこれらの結果が、がんにおける新たな診断・治療法の開発に繋がると期待できると述べている。
▼外部リンク
・京都大学 研究成果