創薬支援ネットワークは、全国の大学や公的研究所が保有する創薬シーズを製薬会社へと橋渡しする目的で13年春に発足した公的な創薬支援組織。その本部機能を担う創薬支援戦略室には、製薬会社などで経験を積んだ人材、約20人が集まり、多様な専門領域をカバーする体制を構築した。
これまでに全国の大学や公的研究所など60機関と包括的秘密契約を締結し、昨年12月現在で260件の創薬シーズの情報を集めた。
それぞれの創薬シーズについて、創薬コンセプトの妥当性や独創性、アンメットメディカルニーズ、特許の独占性、潜在的なリスクなど様々な角度から“目利き評価”を実施。その上で、実用化の可能性がありそうな25件の創薬シーズを取り上げ、「創薬ブースター」と称して戦略、技術、資金を含めた総合的な研究開発支援を開始している。
研究開発支援としては、詳細な研究開発計画を策定するほか、理化学研究所、産業技術総合研究所、医薬基盤研究所が持つ創薬技術や設備を利用し、ハイスループットスクリーニングや構造最適化、非臨床試験などの実施も支援する。
こうした支援によって創薬シーズに付加価値をつけて製薬会社などに導出することが最終的なゴールだ。
中西氏は「基礎研究の成果を医薬品候補へと変換する過程への支援が抜け落ちている。製薬会社もオープンイノベーションと称して様々な取り組みを行っているが、製薬会社だけでは賄いきれない。公的な支援も必要」と取り組みの意義を強調した。
また、導出のタイミングについて「特にどの段階というのは設けていない。非臨床試験まで実施して導出するというやり方もあるが、お金も人手もかかる。現在支援中の創薬シーズの中には、既に製薬会社が目をつけたもののリスクがとれないと判断したものもあると思う。私たちはリスクをとり、製薬会社が興味を持ってくれる段階まで付加価値をつけたい」とした。
さらに、今後の課題について「アカデミア創薬を支援するための、効果的・効率的な革新的医薬品創出に向けた創薬技術を開発していかなければならない」と言及。その一つとして、日本の製薬会社が保有する化合物ライブラリーを1カ所に集め、網羅的なスクリーニングを実施できる体制の構築を計画している。「現在、有志の製薬会社に集まってもらい枠組みの議論を行っている」とした。