未曾有の被害を出した2011年3月の東日本大震災では、被災地支援に関わる薬剤師の活動が注目されたが、最も支援が必要とされる発災時から超急性期の被災地入りが遅れるなど、初期活動の課題も残った。実際、震災から約4年が経過する中で、医師、歯科医師の災害時対応は進んできたものの、薬剤師の対応は遅れていた。
被災地で医薬品を取り扱う薬剤師の役割は大きく、中でも発災時の初動活動ができる専門的なチームを組織し、いち早く被災地入りすることが重要になることから、同学会は災害時に活動できる薬剤師を育成する目的で、「災害医療支援薬剤師」登録制度を開始することにした。
同学会が作成した研修カリキュラム「災害時に活動できる薬剤師のためのプロフェッショナルスタンダード」をもとに、支援活動の基礎的知識、災害急性期から慢性期のあらゆるステージにおける知識習得を目指す。具体的には、災害時における指揮命令系統の理解など「災害支援の基本」、避難所での医療支援活動や医薬品集積所の業務支援など「災害時の医療支援」、医薬品物流やボランティア薬剤師の調整など「災害時薬事関連」など、80コマの実践的な内容を約2年で学習できるよう構成されている。
既に13年から研修を開始して以来、これまで3回にわたって継続的に研修を行ってきたが、昨年7月の研修でカリキュラムが一巡したため、全ての研修を修了した災害医療支援薬剤師が誕生することになった。審査を経た後、初期活動に参加できる専門的な薬剤師として登録する。有効期間は2年で、更新のための研修を2年に1回行う予定にしている。
登録に当たっての救済措置も設けている。一昨年、昨年の過去2年の学術大会、研修の出席を確認し、登録条件に満たない場合、救済措置として16年12月末までに必要単位数を取得することで対応する。17年1月からは適用しない。
今後、2年間の研修を終えて登録された薬剤師について、災害発生時に有機的に活動できるようチーム編成し、いち早く被災地入り可能な体制を構築できるようにする。災害対応に精通した薬剤師が初期活動に関わることで、被災状況の迅速で適切な立て直しにつなげたい考え。
さらに、日本医師会災害医療チーム(JMAT)に研修を修了した登録薬剤師を派遣することも構想されており、医師会や災害関連の医学会とも連動していくことにしている。