ドラッグラグのない新薬、どのように対応するか
国立循環器病研究センターは1月13日、脳血管内科の豊田一則部門長を研究代表者とする、国内18施設の合同研究チームが、非弁膜症性心房細動を有した急性期脳梗塞患者における近年の国内での抗凝固療法の現状を報告し、多くの興味深い治療動向が明らかにされたと発表した。
画像はプレスリリースより
これは、同研究チームによる前向き観察研究「SAMURAI-NVAF研究」からの第一報として報告されたもの。この研究成果は、世界脳卒中機構の機関誌「International Journal of Stroke」のオンライン版に掲載されている。
心房細動患者の脳梗塞発症の予防薬としては、半世紀にわたってワルファリンがほぼ唯一の選択肢で抑制効果も高いが、出血合併症も多い同剤の扱いは難しかった。国内では、2011年に直接トロンビン阻害薬のダビガトランが非弁膜症性心房細動患者へ承認されたのを皮切りに、翌2012年には活性化凝固第X因子阻害薬のリバーロキサバン、2013年にはアピキサバン、2014年にはエドキサバンが使用可能となったが、これら新薬は海外とのドラッグラグがなく承認されたため、急に増えた選択肢にどう対応するか、臨床現場での情報が求められている。SAMURAI-NVAF研究は、このような要望に応えるべく始まった研究だという。
急性期病院入院中の重大な出血合併症はわずか1例
今回の研究では、ダビガトランの販売が始まってから半年後の2011年9月から2014年3月までの31か月間に、18施設に急性脳梗塞や一過性脳虚血発作で緊急入院し、非弁膜症性心房細動を有していた1,192例を登録した。
急性期病院退院時の抗凝固薬の選択結果では、ワルファリン服用者が依然として過半数を占めていたが、年を追うごとに新規抗凝固薬の服用割合が増加。また、自立して退院できる患者に限れば新薬の割合が6割近くに達し、逆にベッドから離床できない重症の患者ではワルファリンが8割近くを占めていたという。重症患者には嚥下困難例が多く未粉砕薬を服用し難いこと、経済的制約で高額な新薬を選び難いこと、回復期・療養型施設の一部で新薬が使えないことなど、特有の事情が反映されているとしている。
さらに、新規経口抗凝固薬を発症の何日後から使い始めるべきかも現在は不透明のままだが、同研究によると、国内では発症後の相当早い時期から服用が始まっていることが判明。これら患者のうち急性期病院入院中に重大な出血合併症を起こした患者はわずか1例(消化管出血)で、抗凝固薬に不可避と考えられてきた頭蓋内出血は1例も起きなかったという。この結果から新規経口抗凝固薬は、脳梗塞急性期から使いやすい薬と考えられるとしている。(横山香織)
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