若年層をターゲットとした新たな啓発手法として期待
国立循環器病研究センターは1月8日、脳血管内科の横田千晶医長らの研究チームが、中学生を対象とした脳卒中啓発により、生徒のみならずその保護者にも啓発効果があることを明らかにしたと発表した。同研究の成果は、専門誌「Stroke」オンライン版に掲載されている。
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脳卒中発症予防と後遺症軽減のためには、生活習慣是正、脳卒中知識の習得、脳卒中発症時の適切な対処法の普及が重要だ。特に、脳卒中発症後の治療開始時間短縮化のためには脳卒中発症後の病院受診までの時間を最小限にしなければならず、そのためには「脳卒中発症に気付くこと」と「脳卒中発症時の適切な対処法」が周知されていることが極めて重要となる。従来、こうした啓発は成人に対して行われてきており、若年層をターゲットとした啓発手法は確立されていなかった。
そこで研究チームは、平成22年度から京都精華大学マンガ学部と「FAST」を用いたポスター、マンガ冊子、アニメの教材を共同開発し、小中学生を対象とした脳卒中啓発活動を開始。「FAST」とは海外での脳卒中啓発活動で用いられている言葉で、「顔面麻痺(FACE)」「片腕の麻痺(ARM)」「ことばの障害(SPEECH)」の3つの徴候のうち1つでもあれば、「発症時刻(TIME)」を確認して、すぐ救急車を要請するというメッセージである。
専門医療者以外による脳卒中啓発普及の可能性も
今回の研究は、脳卒中死亡率が高い栃木県の9つの公立中学生(13~15歳)1,127人を対象に実施。脳卒中授業の1週間前から脳卒中啓発ポスターを教室に貼り、脳卒中授業は、研究スタッフ医師による講習を受講した脳卒中を専門としない医療関係者(公衆衛生医師、看護師等)による20分間の脳卒中知識の解説、10分間の脳卒中アニメ視聴、10分間の脳卒中マンガ冊子の供覧を行った。また、生徒には、マンガ冊子を自宅に持ち帰り、その内容を保護者に伝えるよう指示をした。
啓発介入前後に生徒と保護者へ、脳卒中に関する理解度のアンケート調査を行った結果、生徒のみならず保護者にも、脳卒中危険因子、脳卒中症状、脳卒中発症時の適切な対応に関する知識の向上を確認。特にFASTにあてはまる項目については、生徒で90%前後、保護者で80%以上が正答し、その理解が確認されたという。
研究チームは今後、脳卒中啓発教材の翻訳を進め、海外への脳卒中啓発手法の発信と、その効果の検証も計画しているという。(横山香織)
▼外部リンク
・国立循環器病研究センター プレスリリース