性ホルモンが膀胱がんの原因物質であることも初めて証明
横浜市立大学は1月6日、同大学医学部泌尿器科の泉浩司医師、上村博司准教授らの研究グループが、抗アンドロゲン療法(ホルモン療法)が膀胱がんの再発を約70%抑制することを明らかにしたと発表した。この研究内容は、米医学誌「Oncotarget」にオンライン掲載されている。
画像はプレスリリースより
膀胱がんは内視鏡的手術後、半数以上の症例で再発を認め、そのうちおよそ10%が進行性の膀胱がんとなるため、定期的な内視鏡的検査を含めた厳重な経過観察が必要である。再発予防として古くから膀胱内薬物注入療法が行われてきたが、効果は満足できるものではないため、新たな治療法の開発が待たれているのが現状だ。
膀胱がんには、男性に3~4倍多く発生するという特徴があり、研究グループはその原因として男性ホルモン(アンドロゲン)に着目。マウスや培養細胞を用いた実験で、アンドロゲンシグナルが膀胱がんの発生とその進展に関与していることを示してきた。しかし、これらの結果が実際の患者にも当てはまるかどうかは、今までに報告はなかったという。
ホルモン療法の膀胱がんへの適応拡大に期待
研究グループは、神奈川県内の16関連施設において約2万人の前立腺がん患者の中から膀胱がんを合併した239人(1.2%)を抽出し、その中から条件を満たす162人についてホルモン療法の有無別での膀胱がんの再発について調査。その結果、ホルモン療法を受けていない76人(非投与群)のうち38人(50%)が再発したのに対して、ホルモン療法を受けていた86人(ホルモン療法群)のうち再発は19人(22%)にしか認めなかった。5年無再発生存率も非投与群で40%、ホルモン療法群で76%と有意な差を認めたという(P < 0.001)。
また、多変量解析によって、ホルモン療法が膀胱がんの再発に対する独立した予後因子であることが判明(ハザード比0.29、P < 0.001)。これは、ホルモン療法が膀胱がんの再発を70%減少させることを意味するという。
研究グループは今後、この結果を前向きの臨床試験によって確認することで、より高いエビデンスを確立し、ホルモン療法の膀胱がんへの適応拡大を目指すという。また、同時に臨床検体を活用しつつ、基礎研究においてさらに詳細なメカニズムを解明し、新たな治療ターゲットを探索していく予定としている。(横山香織)
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・横浜市立大学 プレスリリース