薬剤師国試では、大学別の出願者数は公表していないが、医師や歯科医師など他の医療職種の国試では、各大学の出願者数を公表している。厚労省も「行政として出せる数字、他の職種で出ている数字は公表していく」としており、他の職種と足並みをそろえる形で公表に踏み切った。
新設校を中心に定員割れを起こす薬科大学や薬学部が出ている中、各大学の国試の合格率は、受験生やその保護者にとって、大学選びの際の重要な判断基準となっている。
そのため、一部の大学では、あたかも国試の合格率が高く見えるよう、コントロールしているのではないかとの疑念が生じている。
例えば、ある大学に150人の受験資格を持つ学生がいたとする。学校側の判断で国試に合格できそうな100人だけを選んで受験させ、そのうち80人が合格すれば、見かけの上では80%の合格率になる。
つまり、大学側が発表する国試合格率と留年などを含めた国試合格率には差があるケースが想定される。しかも、新設大学であるほど、見かけ上の合格率と本当の合格率との乖離が大きいともいわれている。
しかし、大学側は受験生の大学選びにマイナスになるような情報は公にしない。関係者からは、「卒業資格を持つ学生を全員受験させたら、とんでもない合格率になる大学もあるのでは」「正しい情報が公開されていない」と問題視する声も挙がっており、大学別の出願者数の公表には、それなりの意味がある。
実際に、過去の出願者数と受験者数の差を見ると、2012年に行われた6年制初の第97回国試では、出願者1万0644人のうち実際に受験したのは9785人で、未受験者数は859人だった。
しかし、第98回国試では、出願者1万2732人のうち受験者は1万1288人で、未受験者数は1444人に増加。第99回国試では、出願者1万4039人のうち受験したのは1万2019人で、未受験者数は2020人に増えている。
次回の国試から、各大学の未受験者数の状況が明らかになれば、大学側のあからさまな合格率の操作は難しくなるとみられる。