急性大動脈解離の進展と拡大、破裂を予防し得る新たな治療法
慶應義塾大学は1月7日、大動脈解離モデルマウスを用いて、急性大動脈解離発症後に生じる血管炎症の発症メカニズムを明らかにし、解離の進展と拡大、破裂を予防し得る新たな治療法を発見したと発表した。
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この研究結果は、同大医学部内科学(循環器)研究グループの安西淳助教、佐野元昭准教授が、同病理学教室(下田将之専任講師、岡田保典教授)との共同研究によるもの。米心臓病学会雑誌「Circulation Research」オンライン版に1月6日付で公開されている。
IL−6のシグナルをブロックすることで発症後の生存率を改善
研究グループは、大動脈解離モデルマウスを用いて、大動脈解離発症後の血管炎症のしくみを経時的に解析。その結果、大動脈解離発症後、血管壁の外膜側に浸潤してきた好中球が産生するインターロイキン-6(IL-6)を介して、血管壁の構造をさらに傷害し、解離の進展と拡大、破裂を引き起こしていることを発見したという。この成果を元に、好中球表面のCXCR2受容体を介するシグナルをブロックして骨髄からの好中球動員を抑制するか、IL-6のシグナルをブロックすることによって、大動脈解離発症後の生存率を改善できることが明らかになったとしている。
研究グループは今回の結果を応用することで、大動脈解離発症後急性期に、C反応性蛋白高値など血管炎症の強い患者に対して、血管の炎症を軽減させ、慢性期の大動脈径の拡大に伴う破裂を含めた大動脈関連事象を予防する効果が期待され、治療の選択肢が拡がる可能性が考えられるとしている。(大場真代)
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・慶應義塾大学医学部 プレスリリース