再生医療のキーファクターとなる細胞外マトリックスを開発
富士フイルム株式会社は2014年12月25日、再生医療のための細胞培養に必要な細胞外マトリックス「cellnest(セルネスト) ヒト1型コラーゲン様リコンビナントペプチド」を、研究用試薬として発売すると発表した。今後は、細胞培養に最適な性能を持つ同製品を、再生医療の基盤材料として研究機関や企業などに販売していくという。
画像はプレスリリースより
再生医療のための細胞培養においては、臓器や組織を作るための「細胞」、細胞増殖や分化を誘導する「細胞間シグナル伝達物質(サイトカイン)」、細胞生育・増殖のための足場となる「細胞外マトリックス」の3つが必要不可欠な要素とされる。
このなかで、より高品質な細胞を安定的に培養するためには、「細胞外マトリックス」が最も重要な要素となる。しかし、現在使用されているものは、ウシなどの動物由来成分のものが多く、狂牛病などの感染症のリスクがあることや、動物の個体差によって品質が安定しないことなどといった問題があった。
高い安全性・生体適合性と、優れた細胞接着性を実現
今回発売したセルネストは、富士フイルムが長年の写真フィルムの研究で培ってきたコラーゲン技術により開発した細胞外マトリックス。ヒト型コラーゲンをモデルとして、遺伝子工学技術を用いて作製した人工タンパク質で、動物由来成分を含まないため、高い安全性を保持できるという。
また同製品は、生産ロット間のバラつきがない安定した品質を維持でき、細胞増殖を促す受容体であるインテグリンとの接着性が高いRGD(アルギニン、グリシン、アスパラギン酸)配列を多く含んでいるため、細胞接着性にも優れているとされる。さらに、酵素で分解されやすい構造で、高い生体吸収性を実現。産生されたタンパク質は全て均一な分子サイズのため、さまざまな形状に加工することも可能だとしている。
今回は研究用途向けに、すぐに使用できる溶液と、使用の際に溶液の濃度調整が可能な凍結乾燥体の2種類をラインアップ。同社は今後も、高機能素材技術やエンジニアリング技術を駆使して、再生医療に必要な細胞外マトリックスの研究開発を加速させていく予定としている。(遠藤るりこ)
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・富士フイルム株式会社 ニュースリリース