ガイドラインを策定するに当たっては、各都道府県で医療需要を推計し、それに見合った医療資源を投入することが重要になる。検討会では、病床の機能別分類として、高度急性期、急性期、回復期、慢性期、在宅医療等の境界点の基本的考え方が示された。回復期と慢性期・在宅医療等の境界点は、療養病床または在宅等でも実施できる医療やリハビリテーションの密度における医療資源投入量とした。
その上で、地域の実情に応じた慢性期と在宅医療等の需要推計の考え方として、高齢化による医療需要に対応するためには、在宅医療への移行促進が必要と指摘。在宅医療等へ移行する患者数について、現在療養病床で入院している状態の患者は25年に在宅医療対応になるものと推計。さらに療養病床の入院受療率には地域差があることから、この差を補正し、地域が一定幅の中で補正する目標を設定できるようにする案が示された。
補正目標の設定は、一つは全ての二次医療圏が全国最小レベルまで入院受療率を低下させる方法で、もう一つは最も受療率の高い二次医療圏を全国中央値レベルにまで低下させ、他の医療圏も全国最小との差を一定の比率で低下させる。
厚労省の調査によると、入院受療率の全国最小は長野県で122、全国中央値は213だった。一つ目の案は長野県レベルに入院受療率を下げるというもので、二つ目の案は全国中央値の213から全国最小である長野県122の水準にするもの。
これに対し、竹久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、「療養病床の入院受療率を取り出し、需要推計のベースに置くのは危険。いろいろなパラメータを除き、本当の療養病床の入院受療率を算出しなければならない」と指摘。「どうしても家に帰れない人もいる。その最後の砦が療養病床であり、皆が在宅医療に移行すると考えない方がいい」と懸念を示した。
山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「入院して在宅に移行したくても受け皿がなく、できる地域とそうでない地域がある。入院以外の選択肢が居宅だけだと、現実的に実現不可能ではないか」と地域差を指摘し、各地で本当に在宅医療が実現できる推計が必要とした。
中川俊男委員(日本医師会副会長)も、「その土地の風土、文化、伝統など、全てが地域の実情ではないか。療養病床を減らすのが改革のように言うが、本当にそうなのか」と問題提起した。