涙嚢炎を起こすリスクが高まる流涙症の治療に
株式会社カネカは2014年12月25日、流涙症の治療に使用する涙道チューブ「LACRIFLOW」を、2014年11月より米国での発売を開始したことを発表した。同製品の販売は、同社子会社のカネカファーマアメリカLLCを通じて行われている。
画像はプレスリリースより
同社は日本において1994年から涙道チューブの製造、販売に関わっており、2012年に製品を全面改良した「LACRIFAST」を国内で発売。今回のLACRIFLOWはその米国販売名である。
流涙症は、少しの刺激でも涙があふれ、視界がぼやけたり、目の周りの炎症が起きたりする症状。涙はまぶたの付け根にある涙点から、涙道を通り鼻腔へ排出されるが、この涙道が狭くなったり、閉塞したりすることが流涙症の原因になる。
流涙症を放置すると、涙で涙道の細菌が流されないため、多量の目やにが出る、目頭が赤くなる、腫れる、痛みを伴うなどの症状を伴う涙嚢炎を起こすリスクが高まるという。
米国の医療環境下においても安全、かつ高い治療成功率で使用可能
流涙症の治療には、涙道の閉塞部分に専用のチューブを挿入して涙道を確保する「涙道チューブ挿入法」と、外科的に鼻骨を取り除き涙道のバイパス形成を行う「涙嚢鼻腔吻合術(DCR法)」がある。
現在、日本では局所麻酔下で日帰り手術が行える「涙道チューブ挿入法」が主流になっており、「DCR法」は全身麻酔や入院が必要な場合があるため、閉塞の部位によって涙道チューブ挿入術が困難であったり、再発を繰り返したりする場合にのみ行われている。
対して米国では、局所麻酔下で安全に処置できる涙道チューブがないことから、いまだに年間約5万例の流涙症治療が「DCR法」によって行われているという。
同製品は、本体材料にポリウレタンと、生体適合性の高いスチレン―イソブチレン―スチレン共重合体(SIBS)を採用。しなやかさと強度を両立させたことにより、従来のシリコーン製チューブと比べて挿入時に本体が破損する危険性を大幅に低減させているという。また、表面に潤滑性の高い親水性コーティングを施したことにより、涙道および閉塞部分へ挿入する時の容易さが大幅に向上したとしている。
同社は、2012年にFDAからLACRIFLOWの承認を取得。その後、限定施設で評価を繰り返し、米国の医療環境下においても安全、かつ高い治療成功率で使用できること、および米国の医療機関でもDCR法と比べ患者への負担が少ないことが確認されたことから、米国での発売を開始した。今後は米国において、眼科領域での医療器事業を本格展開していく予定としている。(遠藤るりこ)
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・カネカ株式会社 プレスリリース