国内初となる吸入型肺血管拡張剤
バイエル薬品株式会社は2014年12月25日、合成プロスタサイクリン誘導体「イロプロスト」について、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬として製造販売承認申請を行ったと発表した。
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イロプロストは国内初の吸入型肺血管拡張剤で、薬剤を肺血管に直接到達させることができる。国外では2003年の発売以来、広く使用されており、国内においては「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での継続的な協議を経て、2010年に厚生労働省から正式にイロプロストの開発要請を受け、PAHの適応症について開発を行っていたという。
同剤は専用の吸入器を用いて吸入するが、この吸入器はポケットサイズのバッテリー式で携帯が可能。これにより、患者のQOLを低下させることなく、治療を継続することができるとしている。
肺高血圧症に関する幅広い治療の選択肢を
今回の承認申請は、PAH患者を対象として国内で行った多施設共同、非盲検、非対照、国内第 3相試験である「IBUKI試験」の主要評価期(12週まで)の結果を用いた。同試験は、PAH特異的治療薬に未治療もしくはエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)またはホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬のいずれか 1剤あるいはERAとPDE5阻害薬の2剤を用いて既に治療されているPAH患者を対象とし、イロプロストの有効性、安全性及び薬物動態を評価した。
その結果、有効性主要評価項目である12週での肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの変化量が改善。さらに、有効性の副次評価項目である6分間歩行距離についても、全般的に改善傾向が認められたという。また、安全性についてもPAH患者集団において、イロプロストは安全で、忍容性も良好であることが示されたとしている。
バイエル薬品は、2014年1月に慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療薬として「アデムパス(R)錠」(一般名:リオシグアト)の製造販売承認を取得し、同年4月から販売している。また、同じく4月には、リオシグアトのPAHに対する効能追加申請を行った。同社は、肺高血圧症に対する幅広い治療の選択肢を提供し、患者のQOL向上に貢献するとしている。(QLifePro編集部)
▼外部リンク
・バイエル薬品株式会社 プレスリリース