富士通は昨年、「未来医療開発センター」を設立。医療ビッグデータの基盤を構築し、ICTを活用した健康増進、疾患の重症化予防や早期発見、新薬創出等の検討を進めてきた。
今回、ビッグデータの基盤が有効に機能するか検証を行うため、国立長寿医療研究センター、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、東京医科歯科大学の4機関と共同研究を行う協定を結んだ。共同研究では、日本人の死因上位を占める癌、循環器疾患、認知症等の予防を目指す。
特に高齢化社会へ向け注目度が高い認知症については、長寿医療研究センターが認知症の早期発見システムを開発する計画だ。認知症の治療薬開発が遅れている中、予防とケアが焦点となっており、同センターの鳥羽研二理事長は、「今できることを考えると、予防はますます大事になる」と述べ、早期発見から介護予防につなげる重要性を強調した。
同センターで認知機能検査などの高齢者機能健診を実施し、今後5年で約1万3000例を登録してデータベースを構築。そのうち数千人を抽出して解析を行う。これらビッグデータを用い、市町村と連携した認知症予防対策を進めたり、地域包括支援センターの医療支援チームが早期診断に生かしたりすることで、介護予防につなげる。市町村が有効な認知症施策を立てるためのモデルとしても活用する。
また、がん研究センターは、政府のメディカルゲノムセンター整備の一環として、患者ごとに癌組織のゲノム解析を行い、同定された変異に基づく個別化医療を診断事業として進める。16年度までに、癌のゲノム医療実施の仮体制を整備する予定。循環器病研究センターは、医療費の2割を占める循環器疾患の予防に向け、食事や運動等の生活習慣に関するビッグデータ解析により、患者の行動変容を促す新たな介入方法を開発する。
循環器病研究センターでデータを収集、分析し、富士通が電子健康記録用データベースの構築、解析システムの開発を手がける。
富士通は、ビッグデータの基盤を活用した共同研究に300億円を投じ、200人規模の体制で進める。