健康人に存在するCD4陽性制御性T細胞が自己免疫反応を抑える
科学技術振興機構(JST)は12月19日、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの前田優香博士、西川博嘉特任准教授、坂口志文教授らの研究グループが、CD4陽性制御性T細胞が自己免疫反応(自己免疫疾患)を回避するために自己に反応するCD8陽性T細胞に安定的な免疫不応答状態(アネルギー)を誘導することを明らかにしたと発表した。
画像はプレスリリースより
また従来フェノタイプが明らかにされてこなかったアネルギー細胞が持つ特徴的なフェノタイプを明らかにし、健康人の体内に自己に反応するCD8陽性T細胞がアネルギー状態で存在し、自己免疫応答を抑制していることを同定したという。
制御性T細胞は、自己に反応するT細胞の活性化を抑制することで自己免疫応答が起こるのを阻止するが、どのようにそのT細胞を安定的に長期間にわたり抑制しているか、またそれらの抑制された細胞は生体内でどのような特徴を持っているのかなど不明な点が多く残されていた。
自己免疫疾患に対する新たな治療法開発に期待
研究グループは、まず制御性T細胞がメラノサイト自己抗原(Melan-A)特異的CD8陽性T細胞活性化時にどのような影響を与えるかを、健康人末梢血単核球を用いてin vitroで検討。その結果、制御性T細胞が自己に反応するCD8陽性T細胞にアネルギー状態を誘導し、長期間にわたる免疫寛容を成立させることが示されたという。
次にアネルギー状態のMelan-A特異的CD8陽性T細胞の分子発現を網羅的に解析したところ、特徴的なフェノタイプを有することが判明。特に細胞表面分子発現に着目したところ、ナイーブフェノタイプ(CCR7+ CD45RA+)でありながら、免疫抑制分子(CTLA-4+ PD-1+)を発現し、特にCTLA-4+CCR7+により厳密に定義されることが示された。
さらに、健康人においては自己反応性CD8陽性T細胞がアネルギー状態で存在していたが、自己免疫疾患である白斑症患者ではCTLA-4+CCR7+フェノタイプを示す細胞が認められなくなり、アネルギー状態が破綻していることが判明したという。
この結果により、制御性T細胞を用いて自己に反応するCD8陽性T細胞にアネルギー状態を付与することで自己免疫疾患に対する新たな治療法開発につながるとし、またアネルギー状態を克服する手法を開発することで、がん免疫療法など広範な免疫治療にも応用可能であると研究グループは報告している。(横山香織)
▼外部リンク
・科学技術振興機構 プレスリリース