同学会は今年5月10日に発足し、理事長には宇野勝次氏(福山大学薬学部分子微生物学研究室教授)、副理事長には平田純生氏(熊本大学薬学部臨床薬理学分野教授)が就いた。
宇野氏は「医薬品の副作用の発現をできるだけ少なくしたいというのが学会設立の目的。病棟業務の推進などで薬剤師の関わりは深まったが、患者の約4分の1は依然として副作用を経験しており、その発現はまだ十分に抑えられていない。薬剤師の存在意義の一つは、医薬品の安全性を確保し、副作用は抑制すること」と語る。
副作用発現のメカニズム解析を進め、その回避策や対応策を考える場として同学会を設けた。年に1回開く学術大会や年2回発行する機関誌などで、様々な研究成果や、病院や薬局における副作用抑制の取り組みを発表してもらう。こうした知識を身に付けた薬剤師を認定し、各医療現場での副作用抑制の実践を後押しする。
知識を習得した薬剤師には、処方監査の徹底や病棟での副作用モニタリングの充実によって、副作用を未然に予防するほか、早期に発見して適切に対応する役割を、今まで以上に果たしてもらいたい考えだ。
このほか、患者の背景を含めて何が副作用症状を引き起こす要因になっているのかを解析する能力も求められる。薬剤師が院内の副作用発現情報を一元的に管理し、原因薬剤の推定や対策の提案を行う体制を各病院で構築できれば理想的という。
医薬品安全性専門薬剤師制度は、これまでに関わった副作用報告事例や回避事例、学術大会への参加や発表などをポイント化し、一定以上のポイントを取得した薬剤師を対象に試験を実施。その合格者を認定する仕組みになる見通しだ。
第1回学術大会で制度の概要を公表。認定委員会を組織し、必要な知識を網羅したテキストを作成する。16年夏の第2回学術大会時に講習会を開き、対象者が存在すれば試験を実施して、その合格者を認定する計画だ。
医薬品安全性専門MR制度の認定要件は、同専門薬剤師制度を土台に今後、詳細を詰める。
同専門MRには、医薬品の副作用報告の精度を高める役割を担ってもらいたい考え。現状では医師らが製薬会社を介して行政側に医薬品の副作用報告を行う際に、副作用を引き起こした可能性のある要因を羅列するだけで因果関係までは示されない。知識を持つ専門MRが医師らと話し合って、様々な要因と副作用症状の因果関係の強さを推定し、報告に反映してほしいという。
同学会の会員数は現在、評議員を含めて約130人。今後、病院薬剤師、薬局薬剤師、薬系大学教員、MRを対象に会員の募集を進め、将来は2000人規模の学会を目指す考えだ。会員が順調に増えれば来年末頃にNPO法人化する。