日本人約19万人対象のコホート研究をプール解析
国立がん研究センターは12月18日、野菜と果物の摂取と胃がんとの関連性について、日本の4つのコホート研究の191,232人のデータを用いて、胃がん全体、部位別(胃の上部1/3に発生する胃がんと、下部2/3に発生する胃がん)、組織型別でプール解析を行った結果を発表した。
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解析の結果、日本人において野菜・果物摂取による胃がん全体のリスクの低下傾向がみられたものの有意性は認められず、一方、男性において日本人に多い下部胃がん(胃の下部2/3に発生)のリスクが低下する可能性が示されたという。
国立がん研究センターがん予防・検診研究センターでは、国内で行われている多数のコホート研究の結果を取りまとめて大規模なプール解析を実施。日本人の生活習慣とがんのリスクの関連を的確に評価し、日本人のためのがん予防法を提示することで、がん予防に貢献する研究を行っている。
ピロリ菌感染者において、野菜摂取が胃がんリスクを低下か
今回の調査対象は、2つのコホートから成る多目的コホート研究、宮城県コホート研究、JACC研究の4つのコホート研究に参加している191,232人。調査開始時の食事に関するアンケート調査から、野菜・果物の摂取量(g)を、1日に摂る野菜全体、緑黄色野菜、果物全体、野菜と果物全体で推定し、摂取量の低い順にQ1からQ5までそれぞれ同じ人数になるように5つのカテゴリーに区切った。そこから、平均で約11年の追跡期間中に胃がんになった2,995人について、摂取量カテゴリーごとの胃がんリスクを比較したという。
胃がんになった人のうち、胃の上部1/3に発生したのは258人、下部2/3に発生したのは1,412人で、摂取量の最も低い群のQ1を基準としてリスクを分析。下部胃がんについては、男性で野菜全体の摂取量が最も少ない群に比べた場合の最も多い群(Q5)のリスクは0.78と統計学的有意に低く、摂取量が多いほどリスクが低い傾向がみられた。緑黄色野菜の摂取量についても、同様に統計学的に有意なリスク低下がみられたという。
抗酸化作用のある成分に富む野菜・果物には、胃がんの原因であるヘリコバクター・ピロリなどによる細胞のDNAへのダメージを抑える働きが期待されている。また、これまでの研究でピロリ菌感染が下部胃がんのリスクを上げることが確認されている。国がんは、野菜がピロリ菌による発がんに予防的に働き、よりピロリ感染との関連が強い下部胃がんリスクの低下がみられたのではと推察している。(横山香織)
▼外部リンク
・国立がん研究センター プレスリリース