デング熱の国内感染が広がったことを受け、厚生労働省は17日、厚生科学審議会感染症部会の下に設置した「蚊媒介性感染症に関する小委員会」の初会合を開き、蚊が媒介する感染症の発生や流行を防ぐ総合的な対策をまとめた予防指針の策定に向けた議論を開始させた。来年2月に指針をまとめ、3月上旬の感染症部会に報告し、厚労省が指針案を策定。来年3月をメドに指針を告示、適用する。
この日の会合では、▽国内感染例未発症時の予防対策▽発生動向の調査の強化▽国内感染の流行拡大防止対策▽医療の提供▽人材の養成▽推進体制および普及・啓発の充実――を柱に指針の策定を進めていくことを確認。指針は、この6本柱に、▽研究開発の推進▽国際的な連携――を加えた八つの章で構成することとなった。
デング熱に対する有効な抗ウイルス薬はなく、水分補給や解熱剤の投与などによる対症療法が行われているため、「研究開発の推進」の章で厚労省が示した論点では、ワクチン等の研究開発の推進を提案。
蚊媒介性感染症に罹患した場合の重症化要因の究明に関する研究の推進、国立感染症研究所や地方衛生研究所、大学などからなる研究機関の連携体制の整備なども挙げた。
論点では、蚊媒介性感染症に関する幅広い知識を持った人材を養成するため、保健所の職員や医療従事者などに対して、積極的疫学調査や、蚊の調査・駆除、ウイルス検査などの研修を行うことを提案した。
しかし、発生時に疫学調査を行う医療従事者が配置されていなかったり、保健所が設置されていない市町村もあるため、そうした地域で人材を養成するための方針を示すよう求める意見があった。
デング熱は、今年8月末に約70年ぶりに国内感染が確認され、これまでに約160人の感染者感染例が報告されている。
蚊媒介性感染症のまん延防止には、平時からの蚊対策や患者の的確な診断と適切な医療の提供などが重要となるが、感染症対策の一環で蚊対策を行うことはまれで、自治体でも知見が乏しくなっているため、蚊媒介性感染症を感染症法に位置づけ、発生・流行の防止を総合的に進めるための指針を策定することになった。