責任遺伝子産物であるカルパイン3が関与
東京都医学総合研究所は12月16日、同研究所の小野弥子主席研究員、反町洋之参事研究員らは、米国アリゾナ大学のCarol C. Gregorio教授との共同研究により、筋ジストロフィーの責任遺伝子産物であるカルパイン3が筋ジストロフィーを防止している分子メカニズムを明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
この研究成果は、米科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)米国科学アカデミー紀要」オンライン版に現地時間12月15付で掲載されており、さらに2015年1月発行予定の「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」誌に掲載される予定。
筋ジストロフィーの新たな治療法の可能性を示唆
アルパイン3は、試験管内では自己を分解してしまう強い活性を持つ不安定なプロテアーゼである。同研究では、カルパイン3が筋肉中で2つの断片に切断され、いったん活性を失った後、再び会合して活性を回復し、機能しうることを発見したという。このようなプロテアーゼの性質は、ウイルス以外の生物では初めての報告となる。
カルパイン3が不安定であることは、筋肉の中でうまく働くために必要な性質であり、これが「筋ジストロフィーを発症しない状態」の維持に寄与すると考えられる。この結果により、カルパイン3の遺伝子に変異があり、活性が失われたために筋ジストロフィーとなっている場合、分解によって生じる2つの断片のうち、どちらか適当な方と同じ部分を補うことにより、活性を回復できる可能性が示された。これは、カルパイン3遺伝子の変異で筋ジストロフィーとなっている場合の新たな治療法の可能性を示唆するものとしている。(大場真代)
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・東京都医学総合研究所 プレスリリース