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頚部動脈解離症の疾患感受性遺伝子PHACTR1を発見−理研

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2014年12月19日 PM06:00

若年層の脳梗塞の原因となる頚部動脈解離症

理化学研究所は12月17日、頚部動脈解離症の疾患感受性遺伝子「PHACTR1」を発見したと発表した。この研究は、 統合生命医科学研究センター統計解析研究チームの鎌谷洋一郎 副チームリーダーと、仏国立保健医学研究所(Inserm)のステファニー・デベット研究員、フィリップ・アムイエル教授らの国際共同研究グループによるもの。この研究成果は、米科学雑誌「Nature genetics」オンライン版に、11月24日付けで掲載されている。


画像はプレスリリースより

頚部動脈解離症は、年間10万人に2.6人と発症頻度は少ないが、若いころに発症する脳梗塞の主要な原因のひとつとされている。軽度の頚部外傷や、感染症、片頭痛、高血圧があると発症しやすく、一方で、肥満症、高コレステロール血症がある場合は発症しにくいことが報告されている。しかしながら、その発症にいたるメカニズムはほとんど解明されていなかった。

片頭痛や心筋梗塞など血管疾患のメカニズム解明に貢献

これまでの研究では、頚部動脈解離症の発症には遺伝的因子が関与しているという報告が多数あり、同疾患のリスクに関与する遺伝子の研究は、疾患の発症メカニズムの理解と予防法の改善に重要な役割を果たすと考えられていた。2004年には、欧州、米国を中心とした研究者が、遺伝疫学的解析手法のひとつ「ゲノムワイド関連解析(GWAS)」を行って、この疾患の疾患感受性遺伝子を解明しようと試みていた。

今回、研究グループは、頚部動脈解離症の患者942人と対照者9,259人に対してGWAS(CADISP-1)を行い、さらに頚部動脈解離症の患者451人と対照者5,157人に対してGWAS(CADISP-2)を追加で行った。CADISP-1とCADISP-2とを合わせて解析したところ、「PHACTR1遺伝子」と「LRP1遺伝子」が、頚部動脈解離症のなりやすさに関係する遺伝子として検出されたという。

その後さらに、新たな595人の頚部動脈解離症患者と2,538人の対照者を追加で収集し、その再現性を確認した。その結果、LRP1遺伝子について再現性は確認できなかったが、PHACTR1遺伝子は頚部動脈解離症へのなりやすさに関係していることが判明したとしている。

頚部動脈解離症のなりやすさに関係すると分かったのは、PHACTR1遺伝子上のrs9349379と名付けられた一塩基多型(SNP)。白人集団の染色体上のこの場所の塩基は5割以上がアデニン(A)で、残りはグアニン(G)である。ヒトの染色体は2本で構成されるが、両方ともA/Aである人と比較すると、A/Gである人は頚部動脈解離症へのなりやすさが25%ほど低いことが判明したという。

PHACTR1遺伝子はすでに心筋梗塞、冠動脈石灰化、そして片頭痛と関連することがGWASから報告されている。PHACTR1の機能はまだ不明な点も多いが、その機能をより詳しく解明することで治療や予防方法の解明に結びつくと期待される。(

▼外部リンク
理化学研究所 プレスリリース

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