厚労省が提示した価格妥結状況調査結果によると、20店舗以上のチェーン薬局の妥結率は96・7%で、薬価改定が行われた12年9月と比較すると69ポイント増加。200床以上の病院も2年前に比べて62・4ポイント増の93・9%となり、大幅に改善した。
一方、単品単価取引については、20店舗以上のチェーン薬局が66・0%と12年度の62・2%に比べてわずかに増加したものの、200床以上の病院は57・3%で2年前から約4ポイント減少。減算制度は9月末時点の妥結率を対象としているため、リミットまでの1カ月間に価格交渉が集中し、医薬品卸側が苦しい交渉を迫られた結果、単品単価取引が後退した。
日本医薬品卸売業連合会の中原岳志卸問題検討委員会委員長は、未妥結減算制度の導入により、「9月末の妥結率の大幅な向上につながった」と評価する一方で、「早期妥結のために従来以上に厳しい交渉をせざるを得ないケースや単品単価交渉が行いづらいケースもあり、真の流通改善にはつながっていない」とした。
また、特定卸、特定品目、特定機関のみ妥結する部分妥結のケースも見られたため、「未妥結減算の趣旨が十分理解されていないと考えられる」と述べた。医薬品卸側にとっては、「妥結率の根拠となる資料」の提供に要する事務負担も膨大だったため、提出資料の簡略化も要望した。
未妥結減算制度では、全国にある5万5000軒の保険薬局全てを対象にしているため、委員からは制度の対象となる保険薬局の範囲の見直しを求める声も上がった。
■毎年薬価改定、良質な医療提供損ねる
この日の会合では、薬価調査・改定の頻度を変更した場合の影響についても議論した。政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)には、「市場実勢価格を適正に反映できるよう、薬価調査・薬価改定のあり方について、診療報酬本体への影響にも留意しつつ、その頻度を含めて検討する」ことが盛り込まれた。
医薬品卸側は、薬価を頻回に改定すれば「常時、価格交渉を行う状況になる」とし、情報収集、情報提供、災害時などの社会インフラ構築など、価格交渉以外のMSの通常業務に支障が出ることを懸念した。経営についても、薬価改定と診療報酬を切り離して行われた場合、薬価差益が増大し、甚大な影響が出る可能性を指摘した。
医療関係者からは、薬価改定は診療報酬改定とセットで行うことを前提にルールが整備されており、薬価に限って改定の頻度を変更することは、全体のバランスを欠くなどの意見が出た。製薬企業側も「革新的な新薬創出の意欲を損ねる」として反対した。
嶋口充輝座長(慶應義塾大学名誉教授)は、「国民に良質な医療を提供する観点から考えると、賛成しかねるという意見が圧倒的だった」とまとめた。