高齢者の転倒危険度計測システムを開発、発売へ
京都大学は12月9日、高齢者の転倒リスクを評価して、転倒予防の意識啓発を促す計測システムを開発したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究は、同大医学研究科の青山朋樹准教授と、筑波大学人間総合科学研究科の山田実准教授、慶應義塾大学理工学部の高橋正樹准教授らの研究グループによるもの。
同システムは、村田機械株式会社が製品化し、同社グループ会社の株式会社日本シューターが「STEP+」(ステップ プラス)の製品名で、2014年12月から全国の医療・介護施設などで販売する予定だ。
転倒リスクの一因である二重課題処理能力を測定
これまで、高齢者が転倒するのは、筋力低下やバランス機能低下などの運動機能低下が原因であると考えられていた。しかし、1997年の研究により「歩行中に話しかけられると立ち止まってしまう高齢者では、その後の転倒発生リスクが高まる」という報告があった。この報告により、転倒には単純な運動機能低下だけでなく、中枢神経系の機能も含めた複雑な機能低下が関与しているという考え方が広まってきたという。さらに、二重課題処理能力の低下が転倒を引き起こす要因となっているという仮説も近年注目されている。
過去の研究によって、このような機能が低下している高齢者は転倒しやすいことや、適切なトレーニング(二重課題処理能力向上トレーニング)によってこれらの機能向上効果が得られることなどが明らかになっている。
そこで同研究グループは、定量的に二重課題処理能力を測定するというコンセプトのもと、転倒発生リスクを評価するための機器を考案し、村田機械の研究開発部門にて同システムの製品化を行った。軽量で持ち運びしやすいデザインを採用し、どこでも手軽に転倒危険度を測定できることを目指している。
測定方法は、被測定者に向き合うよう設置されたPC 画面に表示される前後・左右のいずれかの方向を示す矢印の向きに合わせて両足を移動するという課題と、表示される矢印と逆の方向に移動する課題を実施。両課題での正答率と反応時間を元に運動器の機能を測定する。すると、転倒リスクの評価結果のレポートがPC に出力されるという。
高齢者の転倒事故による寝たきり化が大きな社会問題となり、医療業界などで転倒予防への取り組みが注目されているなか、客観的な評価指標になることが期待される。(遠藤るりこ)
▼外部リンク
・京都大学 研究成果