不良ミトコンドリアを効率よく除去するメカニズムが明らかに
順天堂大学は12月5日、同大大学院医学研究科・神経学講座の服部信孝教授、パーキンソン病病態解明研究講座の今居譲先任准教授らの研究グループが、若年性遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子として知られているPINK1が、同じく原因遺伝子であるParkinをすばやく不良ミトコンドリアへと呼び寄せ、効率よく分解する仕組みを明らかにしたと発表した。
画像はプレスリリースより
さらに、モデル動物で、このスイッチを入れることで、神経変性につながる不良ミトコンドリアの異常蓄積を抑えることに成功。この成果は、若年性パーキンソン病の原因の一端を明らかにし、パーキンソン病の予防・治療法の開発を大きく進展させる可能性を持つという。なお、この研究成果は、科学雑誌「PLoS Genetics」に12月4日付で掲載されている。
パーキンソン病の効果的な早期予防法の開発に期待
同研究グループが今年6月に発表したショウジョウバエ分子遺伝学による研究から、PINK1によってリン酸化されるタンパク質が、Parkin以外にもあることが想定されていた。そこで京都大学の石濱泰教授との共同研究によりPINK1がリン酸化する新たなターゲットとなるタンパク質を探索し、ユビキチンを同定。PINK1はユビキチンだけでなくポリユビキチン鎖をもリン酸化することを見出した。
さらに、ミトコンドリア上にリン酸化ポリユビキチン鎖を形成させると、それを目印としてParkin が呼び寄せられ、リン酸化ユビキチンやリン酸化ポリユビキチン鎖でParkinの2つ目のスイッチが入るという、効率のよい不良ミトコンドリア除去の仕組みを発見したという。
PINK1遺伝子やParkin遺伝子の変異が引き金となる若年性パーキンソン病は、若くして発症するため、とくに早期の予防が重要と言われている。今回、PINK1がParkinのスイッチを入れる仕組みと、不良ミトコンドリアへのParkinの呼び寄せの巧妙な仕組みを明らかにしたことで、同研究グループは今後、PINK1やParkinと同じような作用をするタンパク質のスイッチを操作する人工的な方法を開発し、不良ミトコンドリアの除去によるパーキンソン病の効果的な早期予防に向け、さらなる研究を進める予定としている。(大場真代)
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・順天堂大学 プレスリリース