共通GLを策定したのは、国立がん研究センター研究支援センター(JCOG)など国内6グループ。
中央モニタリングに関するGLでは、モニタリングすべき必須項目を設定した。また、原則として年2回発行するモニタリングレポートのひな形をワードファイルで作成した。
監査GLは、施設訪問監査について規定した。施設選定や症例選定の考え方、監査手順、監査のチェック項目、評価基準、監査結果の報告と対応、監査記録の保管などを盛り込んだ。
発表したJCOGの中村健一氏は、共通GL作成の背景について、日本には多数の多施設共同試験グループが存在し、臨床試験の業務手順はそれぞれ異なるという課題を提示した。
米国では癌の多施設共同試験グループが四つに再編され、NCIの統括の下に標準化された手順でモニタリングや監査を実施しているが、日本ではグループ再編は困難。日本でも実現可能なこととして「各グループにおける業務手順の標準化に取り組んだ」と語った。
中村氏は、研究者主導臨床試験の質の向上、共同試験の推進に向け、他の臨床試験グループがモニタリングや監査体制を整備する上で、GLを役立ててほしいとした。
一方、日本医師会治験促進センターの支援の下、有志のワーキンググループが医師主導治験における「モニタリング計画書テンプレート」の作成を進めていることが、小居秀紀氏(先端医療振興財団臨床研究情報センター)から報告された。
メンバーの小居氏は、施設を対象にした「施設モニタリング」と臨床試験データを中央で一括評価する「中央モニタリング」を必要に応じて実施した上で、それぞれのレポートを統合して「モニタリング結果報告書」を策定し、品質管理を行う方法を示した。
また、これらの実施手順を記載した「モニタリング計画書」を事前に作成して、臨床試験に臨む必要があると強調した。
ワーキンググループは、モニタリング計画書を策定する上で参考になる標準的な文書を、テンプレートとして作成中。来年に公開する予定だ。主な対象は医師主導治験だが、研究者主導臨床試験にもその一部を活用できるという。
既存の2指針を統合して作成された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」には、モニタリングや必要に応じた監査の実施を研究責任者に求める規定が新たに設けられた。同指針は年内に告示、来年4月1日に施行される予定だ。モニタリングと監査に関する規定は、来年10月1日から施行される。
既存の指針には、このような規定はなかった。その具体的な体制整備が、研究実施機関や研究者の課題になっている。運営資金が脆弱な研究者主導臨床試験においては、企業が行う治験と同等のモニタリングや監査の体制を整備することは難しい。限られた資金で、どこまでをどのような体制で実施するのか。関係者は頭を悩ませている。