新規治療法・予後予測マーカー開発へ期待
京都大学は12月4日、Aes(Amino-terminal enhancer of split)の消失で促進されるNotchシグナルに依存する転写によって、大腸がんの浸潤・転移が促進される機構を解明することに成功したと発表した。
画像はニュースリリースより
この研究成果は、同大国際高等教育院特定教授/医学研究科名誉教授である武藤誠氏、医学研究科の園下将大准教授らの研究グループによるもの。米国癌学会「Cancer Discovery」誌の電子版に11月28日付で掲載されている。
消化器がんは、がんの中でも最も死亡率が高い。特に肝臓や肺への転移が死因となっているため、その機序の解明及び予防•治療法の確立が急務となっている。
既存のAbl阻害薬を用いて浸潤・転移予防を目指すことも可能に
今回の研究は、2011年に同研究グループが発表した論文 (Sonoshita et al., Cancer Cell 19:125–37, 2011)を発展させたもの。大腸がん転移抑制タンパクAes (Amino-terminal enhancer of split) が減弱・消失することで起きるNotch シグナル伝達の活性化が、Trioというタンパクの特定のチロシン残基のリン酸化を引き起こし、下流のRhoタンパクの活性化による大腸がん細胞の浸潤・転移を促進することを解明したものだという。
この結果は大腸がんにおいて、Notchシグナル伝達の下流で起きるTrioを用いて患者の予後予測が可能であることを示すと同時に、既存のAbl阻害薬を用いて浸潤・転移の予防を目指す補助化学療法が可能になることを示唆すると、研究グループは報告している。
なお、この診断法に関する技術は既に京都大学が特許出願を行い、科学技術振興機構(JST)の支援で国際特許(PCT)出願が行われているという。更にJSTより事業化予算(START プログラム)が認可され、数年後を目途に開発研究が進行している。(横山香織)
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・京都大学 ニュースリリース