■専門調査会が初会合
政府の総合科学技術・イノベーション会議は4日、2016年度から始まる「第5期科学技術基本計画」の策定に向けた議論をスタートさせた。この日に開かれた専門調査会の初会合では、基礎研究の強化や人材育成、システム改革等の論点が示され、具体的な議論に着手した。来年から論点ごとに検討し、2015年末に答申案をまとめる予定。
内閣府は、5期科技計画の策定に当たって、中長期的に目指すべき国の姿として、「知」の資産を創出し続け、国際産業競争力があり、将来にわたって持続的な成長と社会発展を実現できることなどを例示した。
その上で、新たな基本計画の検討に向け、▽課題達成型アプローチ▽基礎研究力の強化▽科学技術イノベーション人材の育成・流動化▽研究資金制度の改革▽科学技術イノベーション・システム改革▽社会との関係▽戦略的な国際展開――の論点を示した。
特に基礎研究力をめぐっては、日本の基礎研究力の世界的地位低下や独創的で新しい学術分野の創造力が弱っている点に危機感を持つべきではないかと問題意識を示し、新規・融合分野の研究促進や多様な基礎研究が進められるための資金配分の仕組み等がテーマに挙がった。
将来を見据え重要になる科学技術イノベーション人材の育成・流動化については、10~20年後の中核となる人材は、現在育成されているところで、産業界等でも活躍できる多様で優秀な人材の育成、その創造性を発揮できる人材の流動化が課題との認識を示した。具体的には、博士人材やリサーチ・アドミニストレーター等のマネジメント人材、産業界のニーズを反映した理工系人材教育等が論点に挙げられている。
システム改革では、全体における大学、研究開発法人、企業等の役割の考え方が提起され、産学連携のあり方や研究開発法人による「橋渡し」の展開方策、中小・中堅・ベンチャー企業の支援方策が挙げられた。
社会との関係では、国民の信頼と理解を得るため、研究の公正性への取り組みや倫理的課題を検討することも論点に挙げられた。
この日の初会合では、論点をめぐって議論がスタート。永井良三委員(自治医科大学学長)は、「科学技術が現在どういう状況にあるのか、歴史的に俯瞰する総論が必要」と提言。上山隆太委員(慶應義塾大学総合政策学部教授)も「序言が必要」と同意。「大学がどうあるべきかに議論を矮小化すべきでない。個々の大学にシステム改革を迫るものであるべき」と述べた。