リバーロキサバン投与後の血中濃度を測定
国立循環器病研究センター・脳血管内科の岡田卓也医師、豊田一則部門長、分子病態部の宮田敏行部長らの合同研究チームは11月27日、脳梗塞予防への新薬として近年注目を集める新規経口抗凝固薬の実臨床での服用後血中濃度を測定し、脳梗塞患者に使用する場合の注意点を明らかにしたと発表した。
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現在国内では、4種類の新規経口抗凝固薬を、非弁膜症心房細動患者の脳梗塞発症予防を目的に用いることができる。この4剤は、いずれも大規模臨床試験によって、従来薬のワルファリンと同等以上の有効性と安全性が示されたが、大規模臨床試験には急性脳卒中患者が登録されておらず、それらの患者に対しても有効性があるかは分かっていない。
そこで同研究チームは、4つの薬剤のうち国際標準用量とは異なる低い用量で国内承認されたリバーロキサバンに注目し、その投与後の血中濃度を求めたという。
同研究の対象は、急性期脳梗塞・一過性脳虚血発作92例、急性期脳出血7例を含めた脳血管障害での同センター入院患者110例。入院後、新たにリバーロキサバンを開始し、開始後2日を過ぎた時点で服用直前、4時間後、9時間後の血中濃度を測定した。最高濃度と考えられる服用4時間後の血中濃度の平均は、通常用量で186ng/ml、低用量で147ng/mlで、国内外でのシミュレーションから算出された最高血中濃度200ng/ml超よりやや低くなり、特に薬剤を粉砕して使用した場合に、より低値を示したという。最高血中濃度の平均値がシミュレーション値より低かったことで、薬効に問題がないか検証するため、今後は症例の蓄積が必要になるとしている。
急性期脳卒中患者における実臨床での血中濃度を解析した国内初の研究
この研究は、急性期脳卒中患者に実臨床で新規経口抗凝固薬の血中濃度を解析した初めての研究だ。実臨床の研究であるため制約が多く、例えば最高濃度到達時間は個人差が大きいため、投与4時間後の濃度のみでは真の薬効を評価するのは困難とも予測されている。
しかし、同研究チームがこの結果から強く指摘しているのは、国内ではリバーロキサバンに独自の低い用量が設定されているため、本来通常用量が適切である患者にさらなる安全性を配慮して低用量投与することで、薬効が十分に発揮されないことが懸念される点だ。急性期脳梗塞患者への新規抗凝固薬の使用には、他にも解明されていない点が多く、多施設で症例を蓄積・検証することがこれらの解明に寄与すると報告している。
現在、国立循環器病研究センターを中心に、国内18施設で進行中の前向き登録研究SAMURAI-NVAFでこの課題について調査を進めており、今後この登録研究からの報告もする予定としている。(大場真代)
▼外部リンク
・国立循環器病研究センター プレスリリース