和歌山県薬は、30人強のスポーツファーマシストを希望に応じて40団体に割り振った。現在は複数団体を掛け持ちするケースもあるが、来年度は各競技団体にそれぞれ2人以上を配置したい考えだ。
増員に向けて、和歌山県からの委託事業として得た120万円の予算をもとに、スポーツファーマシストの資格取得に必要な認定プログラムの受講料の半額を補助。101人の薬剤師が受講した。来春には資格を取得できると見込まれ、来年度には100人以上のスポーツファーマシストを各競技団体に配置できる見通しになった。
配置されたスポーツファーマシストは今春以降、各競技団体でアンチ・ドーピング講習会を実施してきた。OTC薬のかぜ薬など身近な薬や食品の中に禁止物質が含まれていることを解説し、薬を飲む前には必ずスポーツファーマシストに相談するよう伝えている。
監督やコーチを介したり、選手本人から直接相談を受ける体制を構築し、個別の相談にも応じている。今春からの半年間で約200件の相談を受けた。多いのは鎮痛剤の使用に関するもの。鎮痛剤はドーピングにひっかかると考えている選手は少なくないが、その多くは使用可能だ。選手は十分な知識を持っておらず、支援が必要という。
和歌山県薬常務理事の山下真経氏(くまの薬局)は「専属スポーツファーマシストの配置によって選手の相談窓口ができた。各競技団体での定期的な講習会を通じて、選手たちと密接なかかわりを持てるようになった。全国の模範になるよう、国体をきっかけに継続的な活動につなげていきたい」と語る。
来秋の紀の国わかやま国体に向けて今後、この取り組みをさらに強化する。また、学校薬剤師との連携を深め、児童や学生にアンチ・ドーピングの知識を伝える活動を展開したい考えだ。
専属スポーツファーマシストによる講習会や個別相談は、ボランティア活動と位置づけられ、報酬を得られていないことが課題だ。現在は和歌山県から委託費を得ているが、国体終了後この活動を続けていくためにも、このままではスポーツファーマシストの負担が大きいとして、何らかの対策が求められるという。
また、トラブルが発生し責任を問われた場合の損害に対して保険金が支払われる「スポーツファーマシスト救済制度ができたらいい」(山下氏)としている。